2026年8月26日水曜日

ICC赤根所長への米制裁で対策が求められる、国と地方自治体のシステムのクラウド化推進

8月17日のトランプ氏の娘婿クシュナー氏とイスラエルのネタニヤフ首相の会談後、国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長が制裁対象に加えられた。既にICCのKarim Khan主任検察官らの銀行口座が閉鎖され、クレジットカードも使えなくなり、米系クラウドサービスのメールアカウントが凍結されていたのだが、これまでは石破前内閣の働きかけもあって赤根所長への制裁は留保されていた。

トランプ政権の行動なので意外性はないが、理屈からICCへの制裁を予測するのは容易ではなかった。ICCはネタニヤフ首相に逮捕状を出しているが、管轄権のないアメリカ人には逮捕状を出していない。日本政府への圧力も予想される。トランプ政権にICCへの支援を取りやめるように迫られ、従わないと何らかの制裁を受ける可能性がある。しかし、日本は国際法に基づく外交政策を主張してきており、東京裁判で当時の国際法に基づかない超法規的な判決が出た事もあり、第一次安倍内閣のときにICCに加入した。現在はICCの最大の支援国だ。

1. 政府も気づいた米系クラウドの政治リスク

さて、トランプ政権を刺激しそうなので政府高官は大きな声では言えないが、金融と米系クラウドサービスへの依存が危機管理上の大きな問題となっている。金融制裁の方が被害は大きく対抗手段がほぼ無いので深刻ではあるが、米系クラウドサービスのアカウント凍結も被害は小さくない。官公庁の業務システムのアカウントが凍結されるとアプリケーションの稼働環境どころかデータベースも失われる。ランサムウェアで事業(の一部)が長期停止する事例があるが、そのもっとも深刻な状況になる。AWSのバックアップサービスはランサムウェアにはおそらく対抗できるが、大統領令ではまとめて凍結されてしまう。

2026年7月21日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では、「内外の安全保障環境が厳しく複雑なものとなる中…デジタル基盤について、我が国の自律性を向上させるべく、政府全体で戦略的に取り組む必要がある」と記載された。この閣議決定の前に既にデジタル庁の技術系職員が、米系クラウドサービスへのロックインの程度を、従来デジタル庁が奨めてきたよりも低い程度に留めるように示唆したこともあった。

2. やんわりとした掛け声では実効性がない

もっとも実効性はまだない。実績のあるクラウド事業者は米系サービスに限られる。ガバメントクラウドを推進すると、米系サービスを利用することになる。一度移行したシステムを移動させるのも費用がかかるので、なかなかできない。IT部門も消極的だ。システムエンジニアからすると米系サービスを使うのは心理的、作業的に楽である。データ主権の問題の他にも、費用、応答速度、ネットワーク構成の複雑さなどの面からガバメントクラウドに難はあるのだが、そうは引っ越しさせられない。あと2年と半年経てば、少なくともトランプ氏がホワイトハウスを去るので、データ主権のための対策が恒久的に必要なのかと言う懐疑もある。

3. 急いで取るべき対策

国から地方自治体に対策を強制していく必要がある。抜本的な対策としては、米系パブリッククラウドからの移行*1だが、これは費用がかかるのですぐにはできない。

現実的な対処として、

  1. クラウドからローカルドライブに毎日バックアップをとる(コールドバックアップと差分バックアップの構成)
  2. クラウドからの移行に必要な移行日数を見積もり、ポータビリティの数値的評価をする

ことを義務にすべきだ。

ある市区町村の長がイスラエルを批判してしまい、トランプ氏が市区町村に制裁をかけるとしよう。即日だ。そのとき、どこかに代替システムを構築して業務を継続可能であることを保障し、かつ業務再開にかかる日数を一定以下の程度で、米系パブリッククラウドに依存するように促す事ができる。

データのエクスポートだけでもそれなりの費用がかかるので、地方自治体からは多数の文句が出ると思うが、デジタル庁の皆さんには危機意識をもって非難に耐えて実行して頂きたい。

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