2016年8月19日金曜日

分配側GDPの試算を非難する前に

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GDPはプラス成長だった?日銀・内閣府が論争」で日経が取り上げた事もあり、日銀の金融研究所が出しているワーキングペーパー、藤原・小川(2016)『税務データを用いた分配側GDPの試算』がネット界隈で人気だ。なぜか論文自体をほとんど読まずに悪く言って回っている人がそこそこいるようなのだが、だいたいポイントを外した批判になっているので指摘しておきたい。皆様が思うほど恣意性があるわけでも、政治的な意味があるわけでもない。

2016年8月14日日曜日

日本政府の徴税権の資産価値はゼロ

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日本政府の債務残高が年々大きくなっていることに対し、ネット界隈のリフレ派は二つの反論を良くしている。一つは、政府と日銀のバランスシートを統合すれば、日銀保有分の国債が消せるので財務が改善すると言うもので、日銀券が負債の部に計上される事を忘れているモノだ。一つは、政府資産を差し引いた純債務で見るべきと言う議論で、財務省が作成しているバランスシート*1から純債務残高を見ると債務超過状態な上に状態が急激に悪化しているので、結論に影響が無いモノだ。初歩的な会計知識や数字を確認する意欲に欠けている気がするのだが、何はともあれ反論になっていない。

2016年8月13日土曜日

政治制度を分類する「代議制民主主義」

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何かにつけて、民主主義の是非や、あるべき民主主義を議論しだす人は現れる。しかし、大抵は現在の政治的手続きに基づいて出てきた結論が、議論している人にとって気に入らないだけであって、理論的に整理されていないのはもちろん、経験的に意味のある議論にはなっていない。どのような形態の制度が望ましいかを語るための知識が不足しているためだ。民主的な制度の中で生活している人でも、一つの制度の一部分を知るに過ぎない。他にどのような制度があり得るかは、積極的に学習する必要がある。

2016年8月12日金曜日

雑誌記事によって誤解されていくピーター・シンガー

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いつもは経済学関係の海外ブログ記事などの紹介をしているhimaginary氏が、生命倫理の世界で物議を醸しつつ、贅沢をするよりは寄付をした方が良いと言って回っているピーター・シンガーに関する、ニューヨーカー誌の記事を紹介している。himaginary氏曰く、「同業の専門家の見解を聞くというのは当該の主張を知る一つの手段」だそうだが、書いているのは一般誌の記者であって同業の専門家でもないし、経済学では同業の専門家の寸評を聞いたところで事前知識が無いと何も分からないわけで、哲学でも記事で引用されている短い発言から何か理解するのは無理であろう。実際、「シンガーの矛盾を突いた箇所」とピックアップしているところは、特に矛盾をついていないし、シンガーの主張を理解するのに役立たない。

2016年8月7日日曜日

ラスカルの「真の失業率」にある恣意的な補正

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ラスカル氏の「真の失業率」推定と言うのがあって、リフレ派に人気だ。雇用環境が余りに悪いと職探しをしても仕事が見つからないので、失業者が求職を止めてしまう事を就業意欲喪失効果と言い、これによって就業者が増えていないのに公式統計の失業率が低下することがあり得る。ラスカル氏は、この就業意欲喪失効果をコントロールしようとした「真の失業率」推定を公表しているのだが、一箇所、かなり恣意的な仮定があって、それによって2009年で0.5ポイントぐらい真の失業率が大きく計算されているので指摘しておきたい。また、その仮定が不適切な理由も挙げておく。

2016年8月6日土曜日

統計的仮説検定の基礎が身につく「サンプルサイズの決め方」

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現在、第二次統計学ブームの最中と言って過言ではないと思う。第一統計学ブームは、戦後、進駐軍がデミングを招いて製造業に統計的な品質管理手法を広めた頃で*1、今はサービス業などでも統計的な分析の利用が一般化しつつあるようだ*2。目新しいモノが好かれるのでベイジアンが言及される事が多いのだが、階層ベイズのような煩雑なモノを使う必要も無く、従来型の、つまり頻度主義的なアプローチで間に合うことは多い。しかし、頻度主義者の基本は統計的検定となるわけだが、そこを十分に理解している人は、意外に少ないかも知れない。学部の統計学の教科書でも、仮説検定に割り当てているページ数はそう多くはない*3

2016年7月31日日曜日

私は数式アレルギーの文系でして(ヘラヘラ

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数学ガール」で有名な文筆家の結城浩氏が『「私は数式アレルギーの文系でして」とへらへら笑う大人に耳を貸すな。』と言うエントリーをあげている。嗚呼、これ私のことだなと思った。難しい数式は読む気もないし、しっかり数学を学ぶ気は無い人で、ある意味、標準的な成人だ。数式を見ていると、息切れ動悸で苦しい。数式を見ていなくても、最近、そういう気がするが。さて、批判されている人々を勝手に代表して、返事を書いてみたい。

2016年7月30日土曜日

高橋洋一が示した完全失業率2.7%はグラフの読み違いだった

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元官僚の高橋洋一氏は、だいぶ前から完全雇用失業率が2.7%程度と主張している。根拠となる分析手法が謎だと思っていたのだが、だいぶ前に『日銀の「失業率の下限」に対する見方は正しいか』と言うエッセイでその根拠を示していて、昨日、氏がそれを参照していて気づいた。しかし、これは計量分析になっていないし、そもそも氏が示しているグラフと氏の主張が合致していない。空目しているようだ。

2016年7月26日火曜日

産業別最低賃金の適用拡大と引き上げについて

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濱口氏が「産別最賃は再生できるか?」で、立教大学の神吉知郁子氏の『産業別最低賃金の引き上げが「底上げ」の次なる突破口になる』と言う論説を紹介していた。

神吉氏の議論は、私の理解では*1、次のようなものだ。今の日本の最低賃金は、原則として地域別最低賃金を採用しているため*2、セーフティーネット的な位置づけが強いものとなっており、労働市場における公正競争を確保する目的が失われている。そこで、労使で協力して産業別最低賃金を設定することにより、公正競争を確保して賃金引き上げを促進すべきである。企業別だと実効力のある水準に定まらず、国別だと利害関係が複雑になり過ぎて調停が困難であるが、産業別であれば可能である。

2016年7月23日土曜日

リベラル左派がヘリマネに関して知っておくべきこと

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にわかに新聞などでヘリコプター・マネーが言及されるようになってきた。元FRB議長のバーナンキ流の定義だと*1、国債の発行無しに中央銀行が政府に通貨を譲渡し、政府がそれで減税や歳出を行う事を指す。国債と違って金利もつかないし借り換えの必要も無いので、人々が将来の増税を予想しないであろうと言うのがポイントになる。政府紙幣に近い仕組みだ。

さて、リフレ派に何かといじられるリベラル左派の皆様が知りたいであろう事を考えてみたい。ヘリマネは機能するのであろうか。そして、ヘリマネは今の日本に必要なのであろうか。