2011年9月15日木曜日

福島第一原発で汚染された土地が見えない人

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皆さんは、この福島県双葉郡大熊町の航空写真を見る事ができるであろうか? ─ 驚くべきことに、全く見えない人がいる。

経済学者を自称する池田信夫氏が、「除染の前にLNT仮説の見直しを」で「福島事故についてはLNT仮説を棄却し、年間100mSv以上の持続的な放射線が観測される土地に限って除染を行なうべきだ。そんな場所は原発のサイト外にはもうないので、」と言っている。もちろん、重大な事実誤認だ。

年間100mSvは、大雑把に11.4μSv/hになる。文部科学省の空間放射線量のモニタリング結果を見てみよう。11.4μSv/hを超える地域は少なくない。【33】相馬郡飯舘村長泥(15.7μSv/h)、【32】双葉郡浪江町赤宇木手七郎(15.0μSv/h)、【81】双葉郡浪江町赤宇木石小屋(20.1μSv/h)、【83】双葉郡浪江町赤宇木椚平(32.4μSv/h)が年間換算で100mSvを未だに超える地域になる。なお、福島第一原発の南西数km先の大熊町も、139μSv/hと報告されており、年間換算で1217.6mSvとなる。空間線量率マップ(平成23年8月11日時点)を見ても、10μSv/hや20μSv/hの等高線の内側の領域は少なくない。

7月以降は放射性ヨウ素がほぼ消失したため、空間放射線量の低下ペースは小さいものとなっている。浪江町赤宇木椚平の空間放射線量は、6月1日が37.2μSv/h、7月1日は37.0μSv/h、8月1日は35.0μSv/h、9月1日は35.0μSv/hとなっている。自然に放置していて何時になったら、ICRPの基準で人が居住できる地域になるのであろうか?

以上は広く報道されている事だし、文部科学者のウェブサイトから容易に取得できる情報だ。科学や社会科学は事実関係の整理から始まるので、事実関係の確認を著しく怠っている以上は、池田信夫氏は社会科学者失格と言わざるを得ない。確認されていないリスクを吹聴する環境保護団体も問題だが、存在する放射能汚染を無視する経済評論家も問題だ(関連記事:環境保護団体が福島県民を傷つける)。

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