男性の非正規雇用の増加が特殊出生率の低下につながっていると言う話があるので、都道府県別データから特殊出生率決定要因分析を、お気軽ミクロ計量分析をやってみた。
結論は、家賃などの住居費が高い地域は特殊出生率が低くなる傾向があり、賃金や失業率、女性の社会進出(男女格差)は影響を持たなかった。また、娯楽のコストが高い地域は特殊出生率が低い。
インターネット上で話題になっている事件を、理論とデータをもとに社会科学的に分析。
消費税の税率を上げるか否かで論戦が繰り広げられているが、関連しているのにほとんど触れられていない単語がある。インフレ課税だ。実質成長がゼロであっても、インフレには政府債務を実質的に削減する効果がある。
経済評論家はリフレ派とシバキ派(構造改革派)に分かれるようだが、どちらもインフレ課税にはほとんど言及しない。フィッシャー方程式からインフレになったら(国債の)名目金利が上昇すると思い込んでいるからだ。
リーマンショック後に若年失業率が上昇しており、就職氷河期などと結びつけた話がされている(時事ドットコム)。データの見方に、少し誤解があるように思える。
実は景気悪化で内定が出る時期は大きく遅れる傾向があるのだが、内定率は90年代後半からずっと90%台で推移している(図録▽就職内定率の推移(大卒))。高卒は2003年の74.4%が最低で、2011年は83.5%だ(厚生労働省)。バブル経済のときの内定率とは行かないが、大半の若者が就職できている状況は変わらない。
白川方明日銀総裁のかつての論文、白川(1979)「マネタリー・アプローチによる国際収支・為替レートの実証分析 -わが国のケースを中心に-」の推定モデルを最近のデータで分析しているブログがある。
分析の目的は分からないが、分析方法もデータセットも明示されていて、一見すると特に問題が無いように思える。しかし、白川(1979)にも言える事だが、分析手法が妥当ではない。単に試しただけに思えるので、本来ならば批判するような内容ではないが、量的緩和で円安誘導を主張する人が頻繁に参照するので問題点を指摘したい。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの片岡剛士氏が「量的緩和の効果については実証分析がすでに行なわれております」と言っている。
それを紹介してくれた人がいたので、片岡氏が量的緩和の効果を確認していると紹介している本多・黒木・立花(2010)と、原田・増島(2008)をざっと眺めてみた。しかし、効果があったと言えるのか疑わしい。
生産年齢人口の変化とデフレが関係があるかと言うエントリーで、何人かに強く認められないとコメントを頂いた。人口減少は、経済成長率を低下させ、自然利子率も低下させるが、確かにインフレ率に結びつくメカニズムは明確ではない。
余剰資本を使った生産物による安売りが原因ではないかと思うのだが、厳密にデフレを説明するのは難しそうだ。こういうときは、とりあえず実態経済の傾向を確認するのが良いので、OECD StatisticsのG7のデータから労働力(=就業人口+失業人口)成長率とCPI上昇率のデータをプロットしてみた。
一時、ソロス・チャートと言うのがあって、日米のマネタリーベースの比で為替レートが説明できると言う主張があったが、分析期間を長く取ると当てはまりが悪いので、今では信じられていない。
ところが修正ソロスチャートと言うのが出てきて、マネタリーベースから中央銀行当座預金を引いた現金+法定準備額の日米比が為替レートを良く説明すると言われている。ドイツ証券シニアエコノミストの安達誠司氏が主張しているそうだ。
人口減少とデフレは関係が無いと言う高橋洋一氏の主張を批判しようと思ったら、「高橋洋一氏の「人口減少デフレ論」批判を批判してみる」と言うエントリーで先に検証が行われていた。紹介すると同時に、少し補足したい。
日本の生産年齢人口の減少程度を確認した上で大雑把な人口減少がデフレにつながるメカニズムを解説する。日本銀行の金融政策を擁護する気は無いが、何でも批判すれば良いと言う訳でもない。
Poor Economics(邦訳:貧乏人の経済学)はバナジー(Banerjee)とデュフロ(Duflo)の開発途上国の貧困層の生活行動に関する本だ。
内容は面白く、英語も平易で、小難しい数式・表・グラフはほとんど出てこない。著者のデュフロが人口増加に関してどう考えているのか疑問を持ったので、手にとってみた。
全部を読み込んだわけではないが、日本人から見ると違和感がある部分も少なく無い。アフリカを研究している人々と、アジアに面している日本人とは、ちょっと見ている世界が違うものなのかも知れない。