2017年1月21日土曜日

南京大虐殺論争に決着をつけるためのココ掘れワンワン

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はてなブックマークに棲息するネット界隈の左派勢力・はてサの皆様が、アパホテルに関する反論エントリーを二本書いてきたので拝読してみた。しかし、指摘する2000年から作成中の犠牲者名簿はむしろ中国共産党が主張する30万人犠牲者説に根拠が薄い事を示しているし、当時正確な人口統計がないから住民数の増減は証拠にならないと言う主張は、人口推計値の上限を見て議論しても結論が同じ事を無視している。実際のところ南京事件の全貌が、良く分かっていない事は認めるべきであろう。決着をつけるには、中国共産党が自説の根拠としている紅卍字会と祟善堂の埋葬記録を元に、遺体の発掘調査を行なう必要がある。

1. 作成中の犠牲者名簿はアパホテルの主張を支持する

誰かの妄想」では、犠牲者の名簿があると主張しているのだが、南京大虐殺犠牲者名簿は2000年に作成が開始された作成途中のリストで、その総数は中国政府が主張する30万人に届かない。リストが完成された後に犠牲者数が分かるはずなので、犠牲者名簿が作成途中と言うことは、アパホテルの中国側のでっちあげ主張に部分的にも正当性があることが分かる。さらも南京大虐殺は1937年で80年前の事件で、名簿作成開始時点でも63年前になる。事件後、ずっと平和だったわけではなく、事件の性質上、当事者は死亡している。住民票などの公的記録も無いはずなので、南京大虐殺犠牲者名簿の信憑性がどう担保されるのかは疑わざるをえない。

2. 当時の人口推計値の上限で議論しても結論は同じ

法華狼の日記」と「誰かの妄想」で、当時の人口統計の弱さを指摘している。信頼の低い人口推計から被害者数は計算できないと言う論法だが、実際に人口推計から犠牲者数の推定は行なわれて来ており、「日中歴史共同研究」でもそれが全面否定されているわけではない。中国共産党が自説の根拠としている紅卍字会と祟善堂の埋葬記録の信頼性が人口推計に勝るかと言うと、そうでもないと言うことだ。諸説あるわけだが、15万人~30万人と幅を見て考えれば参考にはなる。南京占領後一ヶ月で人口が5万人増えたことに疑問が出されているが、廃墟から出てきたそうなので事前人口30万人と上限で考えればよい。すると、市民の犠牲者は戦闘の巻き添えを含めて最大5万人にしかならず、国民党軍10万人が全滅したとしても、犠牲者30万人の半分にも満たない事になる。国民党軍の数がもっと少なければ、犠牲者数はさらに減る*1

3. 「日中歴史共同研究」の記述は何も結論していない

上述の二つのエントリーではなく、はてなブックマークでよく言及されているのだが、「日中歴史共同研究」の記述は論争があると言うことしか書いていないので、アパホテルの主張は全面的には否定しない。P.271を見てみよう。

日本軍による虐殺行為の犠牲者数は、極東国際軍事裁判における判決では20万人以上(松井司令官に対する判決文では10万人以上)、1947年の南京戦犯裁判軍事法廷では30万人以上とされ、中国の見解は後者の判決に依拠している。一方、日本側の研究では20万人を上限として、4万人、2万人など様々な推計がなされている。このように犠牲者数に諸説がある背景には、「虐殺」(不法殺害)の定義、対象とする地域・期間、埋葬記録、人口統計など資料に対する検証の相違が存在している。

捕虜の大量処刑はコンセンサスがあるようだが、市中で住民を大量虐殺したかは全く定かではない事がわかる。南京大虐殺論争、とにかく明快な事が少ない。写真など映像資料についても、南京事件のモノなのか疑義のあるものが多数ある上、それ単独で論争に決着をつけられるモノはない。

4. ココ掘れワンワン

アパホテルの主張が極端なモノだとは言えると思うし、事実誤認の箇所も多々あるのであろうが、それが敵視している中国政府の犠牲者数30万人説も信憑性が低いものだ。中国政府の30万人説は、紅卍字会と祟善堂の埋葬記録を根拠としていて、その埋葬ペースが異様に速いこともあって色々と疑われている*2。日本側の記述から捕虜処刑はあったと思われるのでネトウヨの南京大虐殺捏造説はどうかと思うが、中国政府の30万人説を批判してはいけないかとそういう事はない。

「日中歴史共同研究」でも統一見解は得られなかったわけで、はてサの皆様が幾ら論をこねくりまわしても正当化することは難しいであろうし、しっかりした歴史検証をしないとアパホテルなどのネトウヨの皆様を黙らせる事はできない。幸いなことに、それは不可能では無さそうだ。騒乱の時代なので南京事件の遺体なのか判別がつくか課題はありそうだが、紅卍字会と祟善堂の埋葬記録を検証することは不可能ではないであろうし、それをすれば遺体の数や性別と年齢の分布は分かるであろうから、最低でもどの程度の犠牲者数がいたのか、犠牲者に民間人がどれぐらい含まれていたのか、有効な情報になる。

自説を裏付けるための発掘調査が出来るのに、中国政府がそれを実行していない今の状態では、中国政府が主張する南京虐殺事件がでっちあげと言い出す人が出てきても不思議は無い。むしろネトウヨの皆様がでっちあげと言い続けたら、そのうち掘ってくれるかも知れないわけで、南京大虐殺虚構説を煽るのも悪いことではないと思う。掘って大日本帝国陸軍の悪逆非道が明快になったとしても、そこに献花に行くのは安倍総理であって私ではないし。

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