2013年1月20日日曜日

クルッグマンのマネタイズ推奨で注意が必要な点

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財政ファイナンスが禁じ手の理由」のコメントでノーベル賞経済学者のクルッグマンがマネタイズを提言していると指摘があった。そこで述べられているのは、デフレなのだからインフレ圧力を増す政策を取るべきだと言う議論で、確かにマネタイズを推奨している。

DELUSIONS OF RESPECTABILITY(山形浩生訳)」を指摘されたのだが、"Shinzo and the Helicopters (Somewhat Wonkish)"を見る方が、クルッグマンの主張を理解する事ができる。

the credibility of a higher inflation target in the face of the deflationary bias of central bankers may well be best established by (a) reducing the central bank’s autonomy and (b) getting the central bank in the business of supporting ― indeed, monetizing ― government deficits, at least for a while.(拙訳:中央銀行のデフレ偏向を前にしたときの、より高いインフレ目標の信任は、少なくともしばらくの間、(a)中央銀行の独立性を抑えて、(b)政府負債の支援 ─ 実際はマネタイズ ─ を業務とさせる事で、たぶん最も確立するであろう)

インフレ目標を打ち上げても、人々がそれを信じないとKurgman(1998)の意味では機能しない。信じ込ませるために、制度的に中央銀行がインフレ選好するようにしてしまえと言う議論。学術的根拠としては、Eggertsson(2001)に依存しているそうだ。

この主張、注意すべきことが一つある。暗に財政ファイナンスがいつでも停止できることになっている。クルッグマンは流動性の罠、つまりゼロ金利制約、そして恐らくデフレから脱出したら、マネタイズ(to issue fiat money)が破綻を招きうるとは明言している(NYTimes)。つまり、クルッグマンは弊害を考えなくていいとは主張してきていない。

文字通り読むと政府指示のマネタイズになるので、財政ファイナンスと捉えるのは仕方が無い。しかし、クルッグマンの推称するマネタイズは、ゼロ金利、もしくはインフレ目標値以下が前提の中央銀行の国債買い切りオペと言う事になって、制御された金融政策だ。通常想定される財源確保が主目的の財政ファイナンスとは異なる。

さて、日銀が自発的にマネタイズしている分には問題は無いかも知れないが、政府が日銀に命令できるようにすると、財政規律を失いがちだ。この点についてクルッグマン自体がどう考えているのかは良く分からないが、1930年代にリフレーション政策をとった高橋是清は、景気回復後に財政緊縮を図ったものの軍部の恨みを買って暗殺された。

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