2012年4月11日水曜日

腐敗と経済成長

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フィリピンは腐敗があるから経済成長が遅いと言う主張をしている人がいた。民主制度が無いと経済成長がしないと言うアセモグルの主張は広く知られているが、腐敗があると経済成長をしないと言う話もある(中兼(2003))。フィリピンの汚職は世界に広く知られている。特におかしい主張ではない。

しかし不思議の国フィリピンの経済を、そんな単純な話で説明できるのであろうか。フィリピン以外にも腐敗が批判されている中国やインドネシアもあることなので、周辺国と比較してみることにした。

腐敗指数と経済成長率
国名 1995年 2010年 変化 平均成長率
Singapore 9.3 9.3 0.04 3.12%
Japan 6.7 7.8 1.08 1.33%
Malaysia 5.3 4.4 -0.88 2.78%
Taiwan 5.1 5.8 0.72 3.74%
South Korea 4.3 4.5 0.21 3.93%
Thailand 2.8 3.5 0.71 2.16%
India 2.8 3.3 0.52 6.87%
Philippines 2.8 2.4 -0.37 2.81%
China 2.2 3.5 1.34 9.14%
Indonesia 1.9 2.8 0.86 3.08%
注) 成長率はGDPデフレーター調整済みの一人当たりGDP成長率の年平均値。ただしフィリピンのみCPIで調整している。1995年と2005年の腐敗指数は、Corruption Perceptions Indexを利用した。

腐敗度は高い方が潔癖なので、フィリピンの腐敗度が高い事は否定できない。しかし、アジア通貨危機以前は、タイ、インド、中国、インドネシアと同じグループにいた。ところが15年経ってみると、マレーシアを除き他の国々が軒並み腐敗度を低下させる一方で、フィリピンの腐敗は悪化している。案の定、フィリピンは想像を越えている。マレーシアはマハティール退陣後に箍が緩んだのであろうか。

インドや中国が腐敗が高いと経済成長をしないとは言い切れない事を示しているが、普通は経済成長とともに腐敗が減る。フィリピンも経済成長はしているのだから、腐敗を減らせそうなものだが、腐敗を醸成するような何かがあるのであろう。スペイン系植民地であった歴史的経緯などが影響しているのであろうか。腐敗構造と言う面では、アジアでも傑出しているのかも知れない。

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