2012年3月13日火曜日

塩害に強い“非遺伝子組み換え”小麦

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アデレード大学に関連した研究チームが、塩害が発生している土壌で従来品種よりも25%も収穫量の多いデュラム小麦を遺伝子操作なしで開発した(ScienceDaily)。

CSIRO Plant Industryの研究員が非遺伝子組み換え技術(非GM技術の一般の交雑)による交配を用いて、商用デュラム小麦に耐塩遺伝子(TmHKT1;5-A)を組み込み、アデレード大学ワイト研究所がこの遺伝子がどのように耐塩性をもたらすかを分析したそうだ。従来の研究と異なり実際の農場で試験されて成果を出しており、ADWIPによって育種系統として新開発の品種に加えるか評価中だそうだ。研究成果は、Nature Biotechnology誌の3月11日号で公表される。

東日本大震災後の津波でも塩害が発生して稲作ができなくなった地域があるのを記憶している人は多いであろう。塩に強い農作物はほとんどない。しかし、乾燥地域での農業では潅漑が必要となるが、これが排水不備などにより塩害を引き起こしている。世界の農業土壌の20%超に及んでいるそうだ。しかし少量生産を維持・向上させていくには、塩害の発生した土壌を放棄していくわけにはいかない。

対塩性小麦は非遺伝子改良小麦でGM作物の規制に制限されない利点もあるが、この小麦の遺伝子を他の作物に移すのにGM技術を用いる事も期待されている。塩害は長らく頭の痛い問題であったが、品種改良で状況が改善する見込みが出てきたと言える。

もちろん塩害に強い作物が生み出されても、その耐塩性にも限界があるであろうから、塩害を起こさない技術や土壌中の塩分を排出する技術も依然として重要であり、こちらの方も取り組みが行われている(ARDEC45号:ウズベキスタンにおける塩害農地の除塩対策(リーチング)の現状)。

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