2011年12月15日木曜日

ISD条項の真実

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TPPではISD条項が盛り込まれる見込みとなっている。ISD条項は投資家対国家の紛争解決方法で、企業が自由貿易協定違反だとして外国政府に訴訟を起こす権利を認めるものだ。紛争は国際機関で法的効力を持って仲裁される。TPP加入反対論でISD条項で国際間紛争が発生し、米国有利な裁定が下されると言う噂を立てている人々がいる。しかし北米自由貿易協定(NAFTA)のケース・スタディからは、どうもそれは杞憂のようだ。

TPP反対派が危惧している環境・安全基準等は、NAFTAでも国内法が優先されるため、米国の環境基準等を認める事になる可能性は低い。ただしNAFTAの事例を見ている限りは、内国企業と外国企業を差別的に取り扱うケースではISD条項で国際紛争になる可能性がある。S.D.Meyers事件やADMS事件が該当する。Pope&Talbo事件、Methanex事件、UPS事件ではISD条項に基づき紛争が発生したが、差別的取扱いとは認められず、原告企業が敗訴している。ISD条項の弊害とTPP反対派に主張されているメチルマンガン化合物(MMT)事件では、ISD条項以前にカナダの国内通商協定に違反すると認定されていたようだ(中野剛志准教授らによるISD条項デマ)。また、カナダ政府やメキシコ政府が勝訴したケースもあり、米国有利な裁定とも言い切れないようだ(TPP反対派の誇張を駁す。:イザ!)。

TPPにISD条項があれば明らかに外国企業に差別的な国内法は修正する必要が出てくるであろうし、ISD条項に基づく紛争解決をどの機関が行うのかも大きな問題にはなる。しかし、日本も米国も他の国もISD条項にさらされる。未だにメートル法を全面導入できない米国が国際ルールにあわせて商習慣を変えられるわけもなく、TPPを骨抜きにさせない仕組みとして導入されると考えた方が良さそうだ。

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