2011年6月18日土曜日

三陸沖で浮体式洋上風力発電の実証実験を

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浮体式洋上風力発電の発電コストが、2020年までに$0.08~0.1/kWh(約6.4~8円/kWh)になる試算が出て来た(Windpower Monthly)。従来の洋上風力発電は、陸上風力発電よりも高コストなのが問題だったが、浮体式は基礎工事が無く軽いため、港で建設して移動・設置する事ができるためだそうだ。40円/kWhを超える太陽光発電よりはずっと廉価で、原子力に届かずともLNG/石炭火力に匹敵する発電コストになる。

現在動いている浮体式洋上風力発電は、2.3MWタービンを積んだHywindだけで、沖合10Km・水深220mの地点に設置されている。2010年は7.3GWh(利用率36%)の発電実績を記録した。総工費は6200万ドル(約50億円)だそうだ。日本の海はすぐ深度が深くなるため、従来型の洋上風力発電は適していない。しかし、沖合10Km・水深220mであれば、6m/sや7m/s以上の風力を期待できる海域は多い。発電実績で見ると110万Kw級原子炉1基の1%未満に過ぎず頼りない感じだが、設置面積は豊富にあり、もっと大型の10MW級タービンも搭載できるかも知れないから、容量的な心配はしなくて良いであろう。沖合いにあるので、騒音公害なども問題にならない。

日本でも風況の良さそうな沿岸の洗い出しは済んでいて、三陸沖で問題なさそうだ。図の緑色から青の領域が、風況が良い所を表す。いわて海洋資源活用研究会中間報告書(公表版)によると、三陸北部は採算ラインの風速が観測されている。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は浮体式洋上風力発電の調査活動を開始したようで(SankeiBiz)、来年度には浮体式洋上風力発電に適した海域の洗い出しが済むはずだ。日本は海洋国であるし、日本の風土に適した再生可能エネルギーとして大いに期待が持てる。

まずはパイロット施設となるが、IHIが提案しているとされる2.5MW風力タービン×5基の構成ならば、250億円ならば即決で実証実験を行えば良いと思う。将来的に競合者が参入しやすいように、気象観測データ等は公共財として公表する等の工夫は必要だろうが、注意が必要なのはそれぐらいだ。高コストで将来性の無い従来型の再生可能エネルギーのために、電力料金にサーチャージを上乗せするよりは、ずっと可能性のあるプロジェクトになる。日本は離島も多いので、政治的・軍事的にも有用だ。硫黄島に浮体式洋上風力発電タービンがあっても、悪くない。

火力や原発のように常時運転とは行かないので、浮体式洋上風力発電が再生可能エネルギーの全ての問題を解決するわけではない。特に需要追随運転が不可能であるため、揚水発電所との併用や、メタン生成技術と組み合わせる事が必要になるかも知れない。しかし、日本の風土で賦存量が十分に見込める技術は他に余りない。特に10年以内で実用化可能そうなものを探した場合、浮体式洋上風力発電しか残らないのが事実だ。見込みがあるテクノロジーに肩入れしたって悪くは無い。

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