2019年1月29日火曜日

景気がよいのに、消費が伸びていない問題

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消費税率引き上げ後も雇用情勢から景気はよいと言えるのだが、家計消費が減っていると言う話がある*1。減っていると言うのは増税前の駆け込み消費が増えた2013年度と比較してのことで誇大広告論法になっていると思うが、2012年度以降、実質消費が微増にとどまっているのは確かだ*2。もっともこれは高齢化の影響で、医療費など政府から個人への移転である家計現物社会移転受取を加えた現実家計最終消費をみると増えている(下図)。

2019年1月24日木曜日

毎月勤労統計のプログラムに関する問題は、プログラミング言語が古臭いことではなく、テストをまともにしなかったこと

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経済学者を名乗る池田信夫氏が、毎月勤労統計の統計処理が適切に行われなかったことに関して、「COBOLで書かれた特殊なプログラムなので高齢者しか読めず、そのミスがチェックできな(かった)」と主張しているのだが、ソフトウェア開発の観点から問題があるので指摘したい。コードレビューと言う観点から言うと、古臭いプログラミング言語の方が有用だったりするし、システムと言う観点では動作テストをまともにしていなかったことの方が問題である。

2019年1月21日月曜日

毎月勤労統計の500人以上の事業所の全数調査をサンプリング調査に変えると、どの程度、精度が落ちるのか?

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毎月勤労統計に関して500人以上の事業所に関して全数調査をサンプル調査に切り替えても適切に統計処理をすれば十分な精度が得られるという大阪大学の大竹文雄氏の主張*1に、東北大学の田中重人氏が「2003年の時点で「きまって支給する給与」平均値の1%の増減を識別できなくなっていたことは『毎月勤労統計要覧』チェックすればすぐわかる」から「嘘だ」と批判している。しかし、そんなに精度が落ちる理屈は無さそうなので記しておきたい。

2019年1月19日土曜日

好景気に緊縮反対を訴える人々が見えていないモノ

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バブル期以来の高雇用で、上場企業の利益も2016年、2017年は過去最高益を記録したのに、緊縮反対を訴える人々が、「薔薇マークキャンペーン」なるものを展開している。ばら撒きの駄洒落で薔薇マークと言うのはどうかと思うが、それはさておき趣意書を拝読してみたのだが、色々と見えていない事、もしくは見たくない事が多いようだ。発起人らしき人々は何度か目にしていることなはずなのだが、一応、指摘しておきたい。

2019年1月15日火曜日

この三人はこんな事を考えているのだなと分かる「そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学」

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ネット界隈で参照している人が多い対談本「そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学」をざっと拝読したので感想を記したい。

マルクス経済学者からマルクスの影響を受けたケインジアンぐらいになりつつある松尾匡氏をガイド役に、英国在住のコラムニストのブレイディみかこ氏と社会学者の北田暁大氏が、マイノリティ擁護的な社会運動に傾斜した左派やリベラルの問題点を愚痴りつつ、もっと経済政策に関心を持つべきだと議論している三人の考え方や興味関心が分かる対談本。意外に三者三様だった。

2019年1月12日土曜日

日米金利差をつかった推定によるアベノミクスの円安効果の効果量

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ネット界隈ではアベノミクスによって円安になり輸出企業や観光産業に利益があったとするリフレ派と、輸入物価があがって庶民の生活に不利益であったという左派が言い争っているのだが、そもそもアベノミクスが円安を引き起こしたのか、どの程度の効果量があったのか自明ではない。

2019年1月10日木曜日

三角関数は絶対に学ばされる知識なのか?

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元大阪知事/元大阪市長/弁護士/タレントの橋下徹氏が「三角関数は絶対必要な知識なのか」と言う疑問を投げかけている。「国民全員が絶対に学ぶべき義務教育」に三角関数は含めるべきではないと言う主張だと思うが、すでに義務教育から三角関数は排除されているし、高校数学でも数Ⅱなので必修範囲には含まれない*1。理工系の大学に進学する高校生は学ばないといけないが、大学の勉強で使うので諦めよう。

2019年1月9日水曜日

近いうち解散と野田総理の退陣は円安をもたらしたのか?

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第二次安倍政権になったおかげで、大規模な量的緩和がなされて景気回復がなされたと言うのは、リフレ派の多くが信じていることだ。しかし、景気一致指数である有効求人倍率の他、景気遅行指数である完全失業率や就業率の回復開始も野田政権期にはじまる*1ので、時系列的に無理がある主張となっている。

2019年1月5日土曜日

父親も産休をとれるようにすると、母親の就業が支援されて、次の子どもがつくられにくくなる

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男女共同参画で出生率向上のようなことを言い出す人がいる。女性が外部労働に従事すると出産・育児が難しくなるのだが、欧米では様々な制度によって両立させていると言うのがその主な論拠だ。しかし、自然実験をつかった統計的因果分析によると、男女共同参画を狙った制度が出生率を低下させることもある。これを指摘するFarré and González (2018)*1が話題になっていた。

2019年1月3日木曜日

落合陽一×古市憲寿の終末期医療削減による医療費抑制論について

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社会学者というかコメンテーターの古市憲寿氏が前衛芸術家の落合陽一氏との対談*1で、終末期医療の打ち切りによる医療費の削減が必要と主張してネット界隈で論争を呼んでいる。「優生思想に他ならない」と優生思想が何かも分かっていないヒステリックな糾弾はどうかと思う*2のだが、古市氏も医療費全体に占める終末期医療のボリューム感を見誤っている可能性が高い*3