2017年2月5日日曜日

雇用改善しているのに、景気が良くない気がする理由

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金融政策の転換と言う意味でのアベノミクスで景気が回復したような話を良く見かけるのだが、色々と考えると同意しづらい所は多い*1。リフレ派の皆様も、デフレに戻ったので景気対策が必要と言っているので、実のところアベノミクスの成果をそんなに認めていない。なぜ、雇用が良い*2のに、景気が良くない気がするのであろうか。既に反安倍の人々が指摘している事を、請け売りしたい。つまり、高齢化に伴い介護サービスの従事者が増えている一方で、その他の就業者数が以前の水準に回復しているわけではないからだ。

1. 雇用をひっぱる福祉・医療分野

第12回改定日本標準産業分類別就業者」の業種別就業者数のうち、製造業、建設業、福祉・医療の変化を見てみよう。

福祉・医療の従事者数は2002年から2016年までの間、景気の影響を受けずだいたい同じペースで伸び続けている。ここから、2013年4月からの異次元緩和などの影響は受けていない判断してよいであろう*3。リーマン・ショックで打撃を受けた製造業は、2013年1月から横ばいと言った程度だ。アベノミクスで製造業の景気が回復し続けているとは、ここからは言えない。建設業は小泉内閣の頃から徐々に就業者数を減らして来て、民主党政権の間にそれが止まった。

年平均値でみた2012年から2016年までの雇用増170万人の中身を見ると、福祉・医療が102万人と過半になっている。2016年12月の完全失業者数は193万人なので、もしこの数字の分だけ完全失業者が出ているとすれば*4、完全失業率は4.7%であったことになり、大きい影響があることが分かる。リーマンショック前の2007年と比較すると、生産年齢人口の減少もあり全体は8万人増にとどまるが、福祉・医療の就業者数は225万人と大きく増加している。製造業が127万人、建設業が62万人減少したのを相殺した。

生産年齢人口の減少があるので、製造業や建設業の就業者数が横ばいなのは悪くは無いのだが*5、就業者数の増加をひっぱっているのは福祉・医療分野であるのは間違いない。

2. 消費と成長率の低迷とも整合的

日本経済の他の指標とも整合的になる。まず、男性が横ばいな一方で、女性の就業率の上昇が続いているのは*6、女性に介護サービス従事者が多いためだと想像して問題ないであろう。次に、就業者数の増加の一方で、消費が低迷しているところが疑問だったのだが、福祉・医療への支出は大部分が消費統計や家計調査に載らないのでそれが解消される。健康保険料も介護サービス支出も含まれておらず、医療費も自己負担分に限られたものになるからだ。2013年度と2014年度の年金を除く社会保障給付費は1兆6627億円増加しており*7、これを消費に加えると消費増税ショックで消費が減ったといわれる2014年度でさえ、消費が増えることになる。なお、このような調整を加えたものは、現実最終消費と言う。安倍政権期の就業者あたりのGDP成長率の低迷にも整合的だ。介護サービスは労働集約的な産業で、資本投下で生産性の向上が難しい*8

アベノミクスでマクロ経済が悪化したとは言えないのだが、少子高齢化による人口構造と産業構造の変化が及ぼす影響の方が圧倒的に大きいのは間違いない。従来産業は収益もしくは後継者難で斜陽産業になっており、新規産業は老人介護と偏見に基づくが地味なので景況感が悪くなる。全体としてみれば悪く無いのだが、これでは気分は改善しない。しかし、マクロの財政・金融政策でこれを何とかしようと言うのは、無理があると思われる。マクロ経済政策の改善余地があるにしても、そう大きなものでは無いであろう。例えば仮に製造業がかつての水準まで雇用を増やせるとしても、労働供給が間に合わない。

*1アベノミクスで雇用が増えたと言えるのか?」「異次元緩和前に雇用回復は止まっていたのか?」を参照。

*2完全失業率がバブル崩壊後もっとも良い数字で、大卒就職率は統計を取り始めてから最高、有効求人倍率をみるとバブル期に匹敵する。

*3景気が良いと他業種に労働者を奪われる可能性があるが、その影響は大きく無いようだ。

*4もちろん、もっと悪い待遇で他の業種に就いた可能性、労働意欲を喪失して労働市場に出てこなかった可能性はある。

*5退職世代と新卒世代の人口比を考えると、就業者数が横ばいでも労働市場は逼迫することになる。

*62016年の数字を加えていないが、傾向は以下と同じであろう。

*7社会保障費用統計(平成26年度)』を参照した。

*8人工知能分野の発達で色々とできそうな気もするのだが、現在はロボットが介護してくれるわけではない。

1 コメント:

Da Pan さんのコメント...

福祉なんてまさに気持を上げるためのサービスなんだからそこが比重増えれば気持ちはあがるはずじゃね。老人だって気持ち持ってるんだから。
そもそもの出発点として景気が悪い気がするっていうのがどこのどういう統計の景況感の話やねん。

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