2016年12月15日木曜日

V-22オスプレイの不時着を語りだす前に知っておくべきこと

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

空中給油中にローターを破損し、機体不安定な状態で市街地上空の飛行を回避するために、沖縄県名護市沿岸で着水し大破したティルトローター機V-22オスプレイの2016年12月13日の事故*1に関して、その危険性を強調した話をしだしている人をそこそこ見かけるのだが、最低限知っておくべき事が幾つも抜けている気がしてならない。過去の米軍機や自衛隊機の事故について、少しは調べて比較して欲しい。

1. 軍用機は訓練中によく堕ちるので海上で訓練

安全第一の旅客機と異なり、様々な訓練を行なう米軍機や自衛隊機は事故率が高く、その事故はメディアでも度々報じられている。今年、2016年も今回の事故以前に2件の米軍機の着水に至る事故があった。9月22日のAV-8ハリアーの墜落事故は同型機の事故率の高さは広く認識されているのに大した騒ぎにならず、12月7日(先週!)のF/A-18ホーネット墜落事故も強く関心はもたれなかった。なお、よく堕ちるために市街地を離れた海上で訓練を行なっており、これは日本政府・沖縄県・在日米軍の三者で合意された規則になっている。

2. 過去には市街地の被害を顧みなかった事故もある

過去の事故と比較して、今回の事故はかなりマシだ。最悪のケースとして宮森小学校米軍機墜落事故と言うのがある。米統治下での1959年6月30日にに起きたジェット戦闘機の墜落事故で、パイロットが脱出した後の機体が市街地につっこみ死者17名・負傷者212名を出した大惨事がある。米政府の事故対応も高圧的で県民感情を強く悪化させた*2。1977年9月27日の横浜米軍機墜落事件では、同様にパイロット脱出後のジェット戦闘機が住宅街に突っ込み、3名死亡5名負傷の惨事となっている。この二件の事故に共通する問題は、パイロットが早々に脱出し被害の抑制を試みなかった事だ。

3. 今回の事故の被害はコントロールされている

今回の事故では普天間基地への帰還や、嘉手納基地への緊急着陸を諦めることで、事故の被害をコントロールしており、良心的な判断であったと言える。米軍ではなく自衛隊であったらもっと安全に運用できると言うような幻想を抱く人もいるが、自衛隊機でもT-33A入間川墜落事故と言うのがある。機体自体の不良も無いようだし、着水までは制御されていたので、V-22オスプレイの欠陥が露呈したとも言い切れない。ローターが大きいので空中給油中にホースひっかけやすい気もするが、既に中東などの実戦地域を含む全世界で長時間運用されてきた中で、そういう事例が多発しているとも聞かない。不幸は不幸なのだが、その中でも適切に判断された結果である事は認識すべきであろう。米軍の態度も昔とは違うわけだ。なお、オスプレイには緊急脱出装置がないので、米軍の態度が同じでも操縦士に被害最小化を強いる事には注意しておきたい*3

追記(2016/12/16 14:19):大破していることを気にしているメディアがあるのだが、彼らが提示している写真からは浅瀬の底の岩礁に衝突して大破したように思える。また、全員が生きているという事は、着水までは滑空させられた事がわかる。

4. 米軍の態度が高圧的ともまだ言えない

ニコルソン中将の喋り方*4が気に障ったのか、あれから日本国民に対する態度が云々と言っているのだが、ああいう喋り方の英語話者は一定数いるので気にしない方が良さそうである。朝日新聞のアカウントが『安慶田副知事が先ほど在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官と会談しましたが、安慶田副知事によると、ニコルソン氏は「パイロットは住宅、住民に被害を与えなかった。むしろ感謝されるべきだ」と述べ、テーブルをたたいて不満を示した』と報じているが、英語表現として不幸中の幸いのときにthankfulと言うこともあるし、安慶田副知事の発言が挑発的であった可能性もあるので、実際の前後の会話を含めた表現を確認しないと何とも言えず、安慶田副知事からの情報でバイアスがかかっている可能性があるのに注意したい。

5. 不時着?墜落?

不時着と言う表現が気に入らない人がいるようだが、防衛省では『「機体のコントロールを失った状況で着陸または着水する状況が墜落」であり、「パイロットの意思で着陸または着水した場合は、不時着、不時着陸」になる』そうなので、それに沿った表現をしているだけと考えるべきであろう。なお、クラスA事故率の計算には、不時着か墜落かは関係ない。また、オスプレイの飛行実績は十分あり、事故件数も数回と言うわけでもないので、今回の事例一つで事故率が跳ね上がるような事も無い。

*1オスプレイ、空中給油中にプロペラ損傷 「最善の決断」 - 沖縄:朝日新聞デジタル

*2本土復帰運動を加速させる結果になったそうだ(関連記事:沖縄現代史 ─ 米国統治、本土復帰から「オール沖縄」まで)。

*32013年2月5日に搭乗者がペットボトルを落下させる事故があったが、こういう事故の方が配慮を欠いた結果、発生しやすいと思われる。

*4III MEF Marines - Live: Lt. Gen. Lawrence Nicholson on the... | Facebook

0 コメント:

コメントを投稿