2016年11月12日土曜日

他と比較すれば、日本語と朝鮮語はよく似ている

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ネトウヨさんの中でも一部だと思うのだが、日本と韓国に大きな違いがあると言いたいばかりに、朝鮮語を片言も知らないのに、日本語と朝鮮語はまったく違う言語だと言い出す人がいる。どうも「朝鮮語と日本語は基本語彙が全く違う」と言う言説が流布されていて、それから想像力を膨らましたようだ。韓国語を学習すれば信憑性がすぐに分かる話ではあるが、そんな気力もないので『日本語と韓国語』と言う本を読んで確認してみた。

中身は日本語と朝鮮語の比較から、韓国文化の紹介しているエッセイ集。著者の大野敏明氏はネトウヨの愛読紙である産経新聞の人なので、イデオロギー的に類似性を主張する事はないであろう。韓国語を十年勉強したとあり、その運用経験に基づく話も豊富なので、恐らく韓国で現地記者か何かをしていたのだと思われる。

さて、著者の意見では、日本語と朝鮮語は似ている。語順はほぼ同じで、助詞の対応関係は一対一。難しい「(日本語で言う)は」と「(日韓共通の)が」の使い分けまで同じである(pp.112–115)。中国などからの外来語ではない共通もしくは近い音の固有語も300ぐらいある(p.31)。これに加えて、日本語や中国語から朝鮮語に流入した単語も大量にある。ただし、身の回りを表す目、鼻、空、星などの固有語200は全く異なる(p.50)し、尊敬語は異なるものになっているそうだ。なお、関連するが別の議論、朝鮮語と日本語が共通のルーツを持つかについては、著者は態度を保留している*1

隣の国で古来から人的交流があったわけで何ら意外性の無い結論なのだが、足元を確認してしまった。本書は言語の比較だけではなくて、韓国併合前まで朝鮮人女性には愛称しかなく名前が無かったことなど、歴史的、文化的な小噺も織り込まれており、日韓の文化的相違点についても、記者目線から色々と書き綴ってあるので、韓国嫌いのネトウヨさんは読むと良いと思う。日本流の儒教、韓国流の儒教と、日本も儒教国家としてしまっているところが微妙な気もするのだが*2

*1日本語の系統』を読むと、単語もしくは形態素の対応を音韻法則で説明していないので、日本語と朝鮮語が共通の祖語を持つとは断定できないそうだ(pp.57–61)。ただし、共通の祖語を持たない事が証明されているわけでもない。なお、この本の9章に日本語の起源に関する議論があり、日本語と朝鮮語が共通の祖語を持つとすると生じる問題点について意見が書かれている(pp.345–358)。

*2関連記事:韓国で強い影響を持つと言う、儒教って何だろう?

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