2016年6月28日火曜日

異次元緩和前に雇用回復は止まっていたのか?

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リーマンショック後の景気回復は2011年には始まっており、完全失業率にしろ、有効求人倍率にしろ、就業者数にしろ、マネーストックにしろ、コアコアCPI上昇率にしろ、黒田バズーカこと異次元緩和が公表された2013年4月4日、もしくは野田総理が解散総選挙を決定した2012年11月14日以降に大きなトレンドの変化は観測されない*1。ここから異次元緩和が景気回復にほとんど寄与していない可能性は高い。

ところがリフレ派の間では、リーマンショック後の雇用回復は2012年中に一旦終わって*2失業率が悪化し、異次元緩和を予測した円安*3効果で雇用が改善して、新たな雇用拡大局面に突入したと思われているようだ。2012年も11月までは4.1%まで完全失業率が低下しているが、2012年12月から翌年2月まで失業率が1~2%ポイント上昇し、そこからまた低下し始めたことを念頭に置いているらしい。長期時系列で見ると誤差に見えるが、数字は確かにそうだ。しかし、就業者数を見ると同期間は雇用悪化していないし、円安効果がきっかけで雇用改善したとも言い難い。

  1. 2012年12月から翌年2月までの失業率悪化の最中、就業者数は上昇している。就業意欲が増した人が増えたのは、雇用改善だ。生産年齢人口の減少*4を考慮すると、かなりの回復基調と言える。
  2. 円安効果で就業者数が転じたように見えるかも知れないが、非製造業就業者数の方が先行している。製造業就業者数は2013年3月が底だが、非製造業就業者数は2011年9月に増加に転じており、全体でも2012年7月には拡大している。

円安が雇用改善の基調を高めた可能性はあるが、野田総理が解散総選挙を決定した2012年11月14日の後の円安まで雇用回復していなかったは言えない。そもそも為替の動きに即座に反応して雇用を増やすのは無理がある気がするのだが、リフレ派はその辺は気に無いようだ。

円高で廃業に追い込まれる所が減ったのは確かであろうが、円安による製造業就業者数の増加は疑わしく、特に2014年後半から急激に進んだ円安には製造業就業者数は呼応していない。現在までの雇用者数の増加は、円安による製造業の就業者数の増加には支えられていない。

そもそもの議論の土台にも疑義があって、異次元緩和が円安にどれぐらい寄与したかは良く分からない。ここ半年ぐらいの為替相場を見ていると、FRBの利上げ予測が為替を決定しており、量的緩和自体が何か効果を持っているかは疑念がつく*5

追記(2016/06/29 06:11):指摘を受けたのだが、2013年1月から就業者数に派遣社員数(2013年1月時点で20万人)が含まれるように統計が変更されている(統計Today No.61)。2013年は新旧の方式での集計があるので、それを元に旧方式の値を回帰予測を行い、このかさ上げを考慮したグラフに差し替えた。

*1就業者数と有効求人倍率はここの図を、完全失業率とコアコアCPI上昇率はここの二番目の図を、マネーストックについてはここの図を参照。

*2内閣府の景気基準日付の第15循環が、2012年3月から11月までを景気後退期としているのだが、雇用が悪化したとは言えない。

*3その5ヶ月前に変化が現れた一方で、異次元緩和後はさしたる変化がないので、黒田バズーカにはサプライズが無かったと言う事になる気がしなくもない。

*4関連記事:生産年齢人口から「失われた20年」を振り返る

*5関連記事:為替相場にかかった異次元緩和の魔法が解ける

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