2016年5月29日日曜日

有効求人倍率を見ると増税延期の必要は無い

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

安倍総理はアベノミクスが失敗していると言う批判に、有効求人倍率が高水準で推移していることを理由に、失敗したということには当たらないと反論したそうだ(日経新聞)。景気対策と言えば雇用が重要になるわけだが、その中でも景気一致指数で即応性のある有効求人倍率を主要指標として参照するのは妥当である。しかし、有効求人倍率を主要指標としたときに、消費増税延期をすべきとは言えなくなる。

2016年3月の有効求人倍率は1.35で、1991年のバブル期まで遡らないと見られないぐらい高い数字となっている。有効求人倍率を見ると、25年ぶりの大好況となる。こんなに経済の調子が良いのに、なぜ増税をして政府債務の増加に歯止めをかけないのか?

今までは良かったが、消費税率引き上げで悪化すると思うのかも知れないが、過去の増税の影響を参照してみよう。以下のように、ほとんど影響は見られない。有効求人倍率を主要指標とする限り、消費税率引き上げを恐れる事は無い。なお、完全失業率も、大卒/高卒内定率も、有効求人倍率と整合的な動きになっており、この指標がおかしいと言うことは無い。

雇用だけを見ているわけではないと言う反論が来るであろうが、設備投資増減率の推移(時事ドットコム)を見ても、消費増税の影響は見られない。

消費者物価指数(CPI)の推移(毎日新聞)を見ると、CPIは落ちているわけだが、生鮮職員・エネルギーを除くコアコアCPIは消費増税後、上昇しているので、これは国内要因でデフレではない。原油価格などの下落の影響が大きい。

日本国全体の総賃金となる実質雇用者報酬も、消費増税による影響を雇用増加によって相殺できているようだ。

有効求人倍率をはじめとする数多くの指標は不況を示していないし、消費税率引き上げによって大きな打撃を受けたわけではない。消費が弱いと言う指摘も広くされているのだが、本当に消費が弱いのであれば、増税後2年間も雇用は拡大しないはずだ。雇用拡大はサービス業を中心としている。そもそも2016年から10年間は年率0.86%の人口減少が予想される日本経済は、大半の商品の消費数量は減少していくわけで、常に消費が弱いぐらいが適正だ。

増税延期が歳出削減を伴うものであれば、「経済政策で人は死ぬか?」で挙げられたギリシャのような殺人シナリオになる事にも注意が必要だ。社会保障費の削減は医療サービスなどの低下をもたらすであろうし、均衡財政乗数の教えるところによれば、増税と歳出維持の方が、増税延期と歳出削減よりは景気拡大効果がある。

今後、一部で警戒されているようにチャイナ・ショックなどが生じる可能性はあるが、危機が生じる前から緊急経済対策を打つのは何かがおかしい。リーマンショックのときは2008年1月の有効求人倍率1.00が、2009年1月には0.67にまで下落した。1.00を超えている状態で、ここ10年間毎年ささやかれている中国経済崩壊に備える必要があるのであろうか。北京オリンピック後に中国経済終了と思っていた人は、それなりいた記憶がある。

増税延期と言うからには、増税の必要性は認められているのであろう。いつするかと言う問題なのであれば、今が好機に思える。インフレ率2%を達成するまでは増税延期すべきと言う考えもあるのだが、前回の増税延期で安倍総理はそうは説明していなかった。「景気条項付すことなく確実に実施」と宣言している。安倍総理も増税の必要性を認めてきたはずだ。

0 コメント:

コメントを投稿