2015年1月30日金曜日

時系列データの季節調整はどこまで信頼がおけるのか?

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就業者数(季節調整済)の推移のトレンド転換点を最尤法で探してみたエントリーに対して、季節調整をしたとしても月次データは信頼がおけない、年次データを見ろと言っている人がいる。傍証として年次データでも変化が見られる有効求人倍率、民間投資、銀行貸出も確認した上で結論を出したのは目に入らなかったようなのは置いておいて、季節調整がどの程度機能するかを幾つか例を挙げつつ直感的に考えてみたい。

2015年1月28日水曜日

「若者の海外旅行離れ」を検証してみた

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「若者の・・・離れ」を嘆く記事を良く見かける昨今だが、昨日も「なぜ若い人たちは海外に行かなくなったのか」と言う記事が出ていた。「20代の海外旅行者は1996年に約460万人とピークに達し、以降はずっと減り続け、2012年には約300万人にまで落ち込んでしまった」そうだ。「とりわけ減少が甚だしいのが若い男性」で、20代男性に意識の変化があり、インターネットで海外情報を得ることで満足していると指摘している。記事を書いた渋谷和宏氏は、もっとインターネットで勉強したほうがよい。

2015年1月27日火曜日

最低賃金の引き上げを主張する前に

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ある左派リフレ派を自称する女性が、経済セミナーの対談記事を読んで怒っていた。最低賃金が貧困層の雇用を奪っているので、最低賃金を廃止して負の所得税を導入すべきと言う八田達夫氏の主張に対して、負の所得税*1と最低賃金はともに必要だと理由なしに主張していた。

直感的に気に入った政策は、理論や実証抜きでも良いものだと思い込む、昔ながらの左翼の悪い所が出ている。この女性、新古典派経済学の批判も日頃からしているので、新古典派経済学では最低賃金は有害だと結論されていると勝手に思い込むのであろう。そして理屈抜きで、最低賃金の引き上げを主張し続けるのであろう*2。新古典派経済学でも最低賃金が必要となる場合を示せるし、さらに必要になる条件を整理することも出来るのに勿体無い。

2015年1月26日月曜日

アベノミクスで自殺が減ったと言う前に

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自殺者数が17年ぶりの低水準で、しかも経済問題が動機と思われる人が大幅に減少した(ZAKZAK)ことから、アベノミクスで自殺者が減少したと喜んでいるリフレ派の人々を見かけた*1のだが、記事には「5年連続の減少」とも書いてある事に注意が足りていなかったようだ。アベノミクス以前の民主党政権期から自殺率は低下していた。グラフを描いて、確認しておこう。

2015年1月25日日曜日

江戸しぐさが道徳の教科書に載るようになった理由

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失われた江戸時代の礼儀作法と見せかけて自己流マナーを押し付けようとする、擬似史学の代表例になった感のある「江戸しぐさ」だが、その問題の構図について書籍化されていたので拝読した。「江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統」は、「江戸しぐさ」がいかに荒唐無稽な偽史学を論拠する道徳であることを指摘するだけではなく、その成立や普及についても検証を重ねた上で、教育現場からの排除を主張している本だ。前半は江戸文化の薀蓄本として面白く、後半も偽歴史がいかに形成されたか社会学的に興味深い。ただし、教育現場へ浸透した理由は、もう少し掘り下げても良いのでは無いかと思った。

2015年1月24日土曜日

アベノミクスで雇用が増えたと言えるのか?

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アベノミクスで雇用が改善されたと言うリフレ派の人々の話を見かけることがある。就業者数の推移を指して、ある時点から減少から増加に転じたことを指しているのだが、アベノミクスの効果と言うのは無理がある。(1)グラフをよく見ると2012年9月が底になっている。(2)雇用は景気の遅行指数である。(3)景気一致指数の有効求人倍率を見ると、2009年の後半からずっと改善し続けている。

2015年1月23日金曜日

傾向が変化したときの折れた予測線の描き方

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数字の動きをはっきり見せるために、グラフに回帰直線による予測値を添えることは良くある。さらに、トレンドが変わったことを示すために折れた回帰直線を描くことがあるのだが、目分量で描いているように思われているらしいので、描き方を示しておきたい。目立たないが、多少のコダワリがある。

1997年の消費増税後に経済指標が動いたのは1998年と言う嘘

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消費税増税は2年目こそ恐い」と言うエントリーで、1997年消費税増税前後の企業と政府の資金過不足、自殺者数のグラフを出して、消費増税の悪影響は2年目に出てくると主張している。ブログ主には何度か1997年のうちから雇用が悪化していることをグラフを見せつつ指摘しており、それに対する反応もあったので、どうも意図的に嘘をつくタイプの人のようだ。景気先行指数の有効求人倍率は、1997年8月には悪化していた。

「21世紀の資本」は住宅だった

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話題のピケティ「21世紀の資本」だが、去年の6月15日には大きな問題点がMITの院生によって指摘されていた(Rognlie(2014))。査読論文ではないので粗があるかも知れないが、ピケティが描く絵に致命的な問題がある事を、明確に示している。資本の増大と資本分配率の上昇はほとんど住宅と地価の上昇で説明され、ピケティが指摘する生産技術が資本集約的になったことは、ほとんど影響していない。21世紀の資本は住宅と言う、ありふれた形態をしていた。

2015年1月21日水曜日

戦国時代の社会構造と平和な社会への道

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歴史と言うと大河ドラマのように英雄伝になりがちなのだが、いつの時代であれ社会の大半の構造は庶民の生業から構築されている。戦国時代も例外ではなく、武将の言動を追いかけるのではなく、社会の土台となる村に注目しつつ、戦国時代の構造を書き表したのが「百姓から見た戦国大名」だ。

着目しているのは地味な部分だが、戦国時代が終息した理由についてまで話が展開されており、意外に壮大な本になっている。アフリカで発生している部族間抗争などを考えると、現代の問題に関して示唆するものも多い。

2015年1月17日土曜日

バブル崩壊後の金融政策政治事情が良く分かる「日本銀行と政治」

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日本銀行と政治』は中央銀行の基本的な機能を踏まえつつ、リフレ派に批判的な議論が展開されているところは、翁邦雄氏の『日本銀行』と方向が同じものの、政治学者の上川龍之進氏が書いているので経済理論の説明は軽く、マクロ金融政策が決定されるまでの政治過程の描写が重いものになっている。経済事件などの記述も豊富で、巻末に関連年表などがまとめられているが、実証的に手堅い。政治理論に基づく議論は終章まで抑制されているので、ガチガチの政治学の本と言う感じでもない。教科書的な議論を補完するという意味で、マクロ金融政策に興味がある人には、読む価値があると思う。

2015年1月16日金曜日

ピケティ「21世紀の資本」への噂からの感想

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話題の「21世紀の資本」だが、内容について風聞が色々と流れてくるので、拝読する前に噂をもとに感想を述べたい。

本書は、資本収益率(r)が経済成長率(g)を上回ることを長期経済統計を用いて示しつつ、それが起因して富の偏在が発生して問題だと主張している本らしい。例外的にr>gが解消された時期と理由などの論考もされているようだ。

2015年1月13日火曜日

今後10年の経済成長は単純予想で年率0.6%

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ネット界隈では、低成長を前提に話を進めると反成長派と罵られる事が多々ある。そもそも成長が嫌なのか、成長を諦めているのかは違うと思うのだが、過去の傾向から単純な計算を行なうと、そう高い経済成長率は期待できない。年率0.6%ぐらいになる。今までの傾向がしばらく続くと思うのは常識的な態度であるから、低成長を前提にするのを非難するのは不当であろう。

大本営発表をはじめたアベノミクス

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2014年11月の消費者物価指数(CPI)は、2.4%の増加となっている。消費増税の影響が約2ポイントあり、残りは円安の影響と言われている*1。選挙公約から、来年は消費税率は8%に維持されるはずだ。日米のインフレ率の差を考えると、1ドル120円近辺の為替レートは歴史的な円安となっている。国内需要の増加による大きな物価上昇はまだ発生していない。

2015年1月11日日曜日

生産年齢人口から「失われた20年」を振り返る

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「失われた20年」と言うバブル崩壊後の日本経済の低成長を表す言葉がある。これを「他の国は成長し続けているのに、日本は成長なし」などと大げさに表現している人は良く見かける。GDP成長率で見ると、確かに低成長だ。しかし、少子高齢化と言う要因を考慮すると「失われた20年」の存在から疑わしいものになる。生産年齢人口あたりの成長率や就業率を見てみよう。

2015年1月10日土曜日

円安でも輸出数量と投資が伸びていない

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新聞で製造業の国内回帰はよく報じられていると思うのだが、今のところは円安でも輸出数量と投資が伸びていない。どれぐらい伸びていないか、民間企業設備投資の季節調整済実質値、実質実行為替レート指数、実質輸出金額(≒輸出数量)を確認してみた。

アベノミクスはいつから始まっているのか?

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前のエントリーに関して、2012年11月以降の銀行貸出量の変化はアベノミクスによるものだと言う反論が来た。株価や為替レートと異なり、銀行貸出量は投機的な変化はしない事を見落としているようだ。いつもリフレ派の誰かが主張しているように、金融政策が効果を持つには時間がかかる*1

2015年1月8日木曜日

アベノミクス以前から貸出は増えて来ていて、以後にブタ積みが増えた

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「銀行・信金を合わせた総貸出平均残高」のグラフを見て、「アベノミクス以降、明らかに貸出が増えてる」『「銀行にブタ積み」というのは誤報』と主張するページ*1が流れてきた。リフレーション政策の推進者が書いたらしい。しかし、グラフを見ても安倍内閣発足のはるか前の2011年に底を打っているように見えるし、貸出量を見たところでブタ積(=不要な日銀当座預金)の量が分かるわけではない。グラフを描き直して再検討してみよう。

2015年1月7日水曜日

株式市場は消費税率を気にしていない

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リフレ派を名乗る人々は、消費税率引き上げが経済に壊滅的な打撃を与えるかのように主張してきた*1。経済学的な根拠は無いと言える*2ぐらいなのだが、こういう認識が広く持たれているのか気になる所だ。例えば株式市場の参加者は、どのように考えているのであろうか。8%化決定、8%化、10%化延期決定のイベントが続いたので、株価の推移を見てみた。

内部留保を溜め込む企業はやはり守銭奴かも知れない

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麻生財務大臣が内部留保(利益剰余金)が増加している企業を守銭奴と表現したことに関して、反響が広がっている。しかし、現・預金比率は増えていない事から、内部留保が多いことを理由に投資や賃上げをしていない事にならないと批判しているのは勘違いのように感じる。負債は減っているから資金調達能力は増していて、投資や配当を行なう余力が増しているのは変わらないからだ。

2015年1月6日火曜日

純債務を見ても日本の財政状況は変わらない

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日本の財政関係資料」を眺めると、1991年には36.2%だった国債残高のGDP比は、2014年度には140%を超え、一般会計歳入の43%が公債金に頼っていることが分かる。

これだけで債務増加ペースが深刻な状況であるのが分かるが、純債務のGDP比が低い事を持ち出して、楽観的な見通しと増税の不要を説く人がいる*1。しかも統合政府と言い出し、日銀保有分の国債は無問題のように言い出した。とにかく増税が嫌なのであろうが、おかしな議論になっている。

2015年1月4日日曜日

ダメな統計学を避けるための小冊子

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適切な統計をかけるのには苦労が付きまとう。社会データのような様々な要因が混然と影響しあうものはもちろんのこと、生命科学や臨床実験などの比較的綺麗なはずのデータも、誤った取り扱いで誤った結論を導くことは多い。学術論文でさえ、そういう傾向がある。これを正す目的で、「ダメな統計学」と言う小冊子の邦訳が公開されている。議論している範囲が狭いので理系の人向きだが、文系の人も注意を払っていない部分なので、一読する価値はあると思う。ある程度の統計学の素養は要求される。

ラムゼー・モデルで考えるアベノミクスの成長戦略

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アベノミクスの成長戦略の一つの柱は、実現までは難航しているようだが法人税減税(時事公論)だが、企業優遇のために思えるせいか、消費税率の引き上げを伴うせいか、左翼リフレ派の人々には人気が無いようだ。しかし、目的について理解もせずに、批判している人々は多いように思える。後述する理由で賛否は色々とあると思うが、主唱者の意図する理論的背景は知っておいた方が良いであろう。

2015年1月2日金曜日

豊かな国の人々は途上国のために寄付をしましょう、させましょう

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哲学界隈の存命研究者ではピーター・シンガーと言う倫理学者が有名で、動物の取り扱いや妊娠中絶、安楽死などの現代的な倫理問題において多くの著作を持つ功利主義者だそうだ。そのシンガーが先進国の豊かな人は奢侈を抑制し、世界中の恵まれない人のために寄付をしましょう、寄付をするべきですと説いている本が「あなたが救える命: 世界の貧困を終わらせるために今すぐできること」だ。趣旨に賛成はしないのだが、学者ではない人にも読みやすい構成で、用意周到に寄付にまつわる議論がカバーされており、良く調べているなと関心する。