2015年9月1日火曜日

ある藁人形論法的な三角関数の教え方批判について

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鹿児島県知事の発言でにわかに人気となった三角関数だが、「学校の三角関数は教え方が悪い」と言うエントリーが目に付いた。『サインカーブを描いて、円と対応させて、「sinの位相をずらしたものがcosです」って感じで教える』とある。本当であればよほどひどい数学の先生に教わったようだ。しかし大半の学校では、三角関数の定義はそう教えていないし、定義だけを教えているわけでも無い。藁人形論法になっていないか『高等学校学習指導要領解説』で主張を検討してみよう。

最も基本的な三角関数の定義は、単位円の中に直角三角形を描いて教えている。数学Ⅰで三角比を教えた後に、数学Ⅱで三角関数に拡張するからだ。教員が明快に言っているかは分からないが、「角度θの単位ベクトルは(cosθ,sinθ)である」とほとんど言っているようなものであるから、ほとんどブログ主の意図した通りに教えている。

問題は定義では無いであろう。ぺな書き一枚で終わるここで脱落する人はさすがに少数のはずだ。数学Ⅱで正弦定理、余弦定理、加法定理、数学Ⅲで三角関数の極限や導関数の導出を行うのだが、悩むとしたらこの辺りであろう。なお、そこそこ良い大学の理系の学生でも、三角関数の導関数を導出しろと言うと出来なかったりするそうだ。

オイラーの公式から双曲線関数などを含む複素数との関係は、確認した限りだが中高では教えていない。これらは教育としては三角関数と言うよりも、複素解析に分類されていると思われる。「自然対数eのiθ乗(iは虚数単位)がcosθ+i・sinθになるとか言われても『お前は何を言ってるんだ』としか思えず」も記憶違いがあるであろう。

今のカリキュラムや指導方法が完璧とは言わないし、「受験ゲームを勝ち抜くための緊急避難敵なツール」になっている事も否定しない。三角測量をさせて正弦定理の有用性を示したりするのも悪くは無いかも知れない*1。しかし授業時間は限られており、応用例を学ぶ前にチマチマと証明を追いかける必要はある。そして受験ゲームなのは、ひねった問題を出す大学入試に問題があって、教え方のせいでは無いであろう。

ところで正弦定理と言うか円周角の定理の証明をすっかり忘れていて、駄目な自分を再確認した。鬱だ何か食べよう(´・ω・`) ショボーン

*1三次元コンピューター・グラフィックスばかりを強調すると、極座標表示の回転処理だけが三角関数の素晴らしさに思われそうである。しかし中高の数学の範囲で示せる有用性は限られている。例えばフーリエ級数などを教えるには直交基底なども教える必要がある。

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