2015年5月16日土曜日

大阪都構想の挫折が示すもの

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大阪維新の会、ついては橋下大阪市長の主要政策である大阪都構想の住民投票が明日に迫っているが、新聞各社の世論調査では大きな支持を集めておらず*1、否決される見通しだ。明治末期からの特別市運動なのだが、地方自治の限界を露呈して終焉するようだ。考えてみれば当たり前で、大阪市民、堺市民に予算的に明確な利点が無い制度改正を、大阪市民、堺市民が支持する理由が無い。

二重行政問題の解消の意義が良く理解されなかったのであろう。現状では、大阪市に政策実行能力が過剰にある一方で、大阪府に政策調整能力が無いのが問題になっている。府と市で開発事業の重複が見られるのは確かだ。府と市で競うように多目的ビルを建築しているし、限られた水源から考えると広域性がある水道事業が府と市で独立している。

府内での財源のアンバランスも問題になる。中心部である大阪市には企業が多く立地するので、大阪市の財源は傑出して大きい。必然的に、周辺地域よりも大阪市の行政サービスが良くなる事になる。ベッドタウンになる周辺地域から大阪市に通勤している人が少なく無いので、不公平な部分もある*2

ここで東京都を見てみると、中心部の23区は権限が限られる。法人住民税、固定資産税は都の収入である一方、都市計画決定権も無い*3。区長や区議会が住民ニーズを細かく調整できるとされるが、実態として権限は大きく無い。府と市の調整が上手く行くようになり、区の行政が円滑になると言っても、市民のための予算は減ることになるわけだ。

こういうわけで、意義が受け入れられなかったのは当然だ。もちろん投票結果は開けてみないと分からないが、府と市の利害調整を市の住民投票で行なうのは無理があるように思える。否決されても違和感は無い。そして否決される事によって、地方自治改革は中央から進める必要がある事が確認されるのであろう。

否決されれば引退すると言われている橋下氏の最大の政治的業績は、地方自治の自己改革の限界を示したことになるかも知れない。

*12日後に迫った大阪都構想の住民投票、各紙世論調査の数字を考える

*2ただし兵庫や奈良から通勤する人も多いので、大阪府だけで公平にすべきかは分からない。

*3ただし児童相談所の設置や小中学校の教職員人事などで、大阪都構想の方が区の権限が大きい(毎日新聞)。

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