2015年4月29日水曜日

朝鮮日報の語訳:×英語も分からないまま ○わけも分からないまま

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朝鮮日報の記事にある元従軍慰安婦の李容洙氏の証言が話題を呼んでいる。「満16歳の時に英語も分からないまま日本軍に連行されていった」と言うもので、なぜ英語が分かる必要があるのか憶測を呼んでいた。しかし、騒ぐほどの事ではなかった。単なる誤訳だそうだ。「わけも分からないまま」が正しいらしい。かなりの人が騙されてしまっているが。

2015年4月24日金曜日

「ロスの知人」のエミコヤマdisについて

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立派な人でも筆が滑ることはある。従軍慰安婦問題で著名な秦郁彦氏の雑誌『正論』2015年3月号に掲載されたエッセイで、活動家のエミコヤマ氏について誤解が並べられていた。「ロスの知人から届いた情報によると」から始まる四段落(P.113 中段)なので「ロスの知人」がニュース・ソースなのだと思うが、少なくともこの問題に関しては信頼はしない方が良かったようだ。意見を両極端に分類し、党派的対立構造を作ろうとしている。

2015年4月23日木曜日

アイヌは日本の先住民族と言えるか?

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思想家の東浩紀氏がアイヌ民族が日本の先住民族であるかと聞かれて、瀬川拓郎氏の「アイヌ学入門」を文献としてあげつつ事態はそんなに単純では無いと否定した*1事に関して、なぜか厳しく批判されていた*2。皆さん、行間を読む前に行を読もう。そして、紹介された文献を読んでみよう。その上で世界の先住民族とアイヌの違いを考えると、アイヌを単純に先住民族と形容したく無いのも理解できるはずだ。

2015年4月21日火曜日

あるマルクス経済学者のプロパガンダ(16) - 功利主義で妥協できないのか?

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マルクス経済学者の松尾匡氏の連載『理性による自己支配という自由概念の恐怖──リバタリアンは消極的自由論に徹しているか?』が出ていた。ここ3回は「自由」についての話が続いていて、「リバタリアン的な立場に立ちながら」「福祉政策や不況対策が正当化できる理屈づけ」を模索している。前回では「自由」の定義を摩り替えることが提案されていた。今回は集団主義的な「理性」を前提にした自由が集団による暴力に転化する危険性に言及した上で、リバタリアンの主張がその解決になる事に触れたあと、現代社会はリバタリアンの想定とは異なっていると指摘している。用語の使い方に違和感があるのと、功利主義を押し付けた方が楽に議論できる気がして仕方が無い。

2015年4月20日月曜日

数学では何を学ぶべきか

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題名からすると数学の実用方法が書いてありそうな『数学をいかに使うか』は、数学徒における「使う」の意味について考えさせられる本だった。数学では何を学ぶべきか、何を教えるべきかが書いてある。「使えない数学は教えなくてもよく、学ばなくてもよい」そうだ。偉い先生が書いた本らしく、歯切れが良い。著者の志村五郎氏は、著名な数学者である。

2015年4月16日木曜日

何が狂っているのか分かる「フランス現代思想史」

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フランス現代思想に詳しい文芸評論家が社会問題等を語るのを見て、稚拙に感じた人は多いのでは無いであろうか。「脱構築」な聞きなれない単語を並べて来る一方で、歴史や制度や技術に関する知識が心もとない。一方で、論理が飛躍するし、矛盾した主張もされることがある。断片的な知識を入れると、言葉の端々から連想される結論に飛びついてしまう。ほんわかしていて批判に備える殺伐感が無い。

2015年4月13日月曜日

ノビー、村上春樹の問題意識は間違っていないから

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経済評論家の池田信夫氏が、小説家の村上春樹氏の反原発の弁誤解に基づく難癖をつけている。村上氏の発言も、費用便益分析も、現地事情も理解していないようだ。

まず、『村上のような人々が「被災地を除染して放射能を1mSvにしないと帰宅させてはいけない」と言い張っている』とあるのだが、村上氏が除染をどこまですべきか主張した形跡が見つからない。「村上氏のような人々」に村上氏が含まれないのかも知れないが、原子力政策の是非と放射線防護の適性水準は別の議論なのだから、二つに関して同じ主張をするとは限らない。

2015年4月8日水曜日

福島の外側で正常化できた人とできない人

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毎日新聞のサイトに、絵本作家・松本春野氏へのインタビューが掲載されていた*1。福島第一原発事故を反原発運動に結びつけることで、「福島は住めない」「福島県産食品は危険だ」といった差別や偏見を助長した事に対する反省の弁が述べられており、地域や個人で異なる問題を「フクシマ」と一つに括る事を差別や偏見を助長すると批判している。福島と言う広い地域・大きな社会を、原子力政策の失敗地フクシマとしてだけ捉えることが、どういう問題を引き起こすのか理解されてきたのであろう*2。社会学者の開沼博氏は、俗流フクシマ論と批判している*3

エッジが立ったガチ教科書だった「父が息子に語るマクロ経済学」

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マクロ経済学者の齊藤誠氏の「父が息子に語るマクロ経済学」を、ふとした切っ掛けで手に取ってみた。タイトルから議論の踏み込みの甘い啓蒙書かと思っていたのだが、想像とは大きく異なるものになっていた。父と子の対話でカジュアルなイメージを醸し出してはいるが、内容はしっかり標準的なマクロ経済モデルに基礎を置いている。また、いわゆる教科書と比較すると、モデルの選び方やデータにつけた注釈に個性や主張があって、かなりエッジが立っている一冊になっていると思う。

2015年4月2日木曜日

ラノベに感じるには修行が必要だった「多様体の基礎」

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数学徒や物理学徒の間で平易な説明からラノベのようだと名高い多様体の教科書がある。松本(1988)「多様体の基礎」だ。説明を平易に内容を絞り込んだテキストで、出来る子はもっと範囲の広い「多様体入門」の方を読んでいるようなのだが、多様体と言う単語を理解するために読んでみた。