2014年12月15日月曜日

消費税率引き上げで若者の負担は減る

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

「年金給付を削らずに消費税だけ増税したら、その負担はいまの若い人に重くかかる」と言う話を見かけた。消費税率を引き上げた分だけ、制度的に年金給付額も増えると言う指摘のようだが誤りだ。今は平成16年改正で、消費税率引き上げのような賃金上昇なきインフレは、年金給付額を引き上げないようになっているからだ。

公的年金はわかりづらい制度なのだが、『厚生年金・国民年金 平成16年財政再計算結果(報告書)』の第3章の3節(特に第3-3-2図、下に転載)を読むと概要が分かる。68歳未満の未裁定者、68歳以上の既裁定者で調整方法が異なるのだが、物価>賃金>0のときは年金上昇率は両方とも賃金にあわせられる。消費税率引き上げは、今の年金生活者が受け取る年金にも影響するわけだ。

なお、物価スライド特例でデフレなのに給付額が削減されなかった分は、それが解消されるまで給付は維持される。また、当面は給付水準調整期間としてマクロ経済スライドが適応され、労働人口の減少と平均余命の伸びに応じて、年金給付の上昇は抑制される。どの道、消費増税で年金給付が増える仕組みにはなっていない。

年金給付の実質価格での削減になり、その分は社会保険料や税金を多く払う現役世代の負担削減になる。現役世代が将来もらう年金の実質額も減ってしまうと思うかも知れないが、現役世代の負担減少-現役世代の年金減少=引退世代の年金減少になるので、合計すると負担は減る。賃金上昇を伴うインフレでは現役世代の負担は減らないが、賃金上昇を伴わない消費税率引き上げでは減ると言うのは意外な話かも知れないが、公的年金はそういう制度になっている。

追記(2014/12/21 01:55):平成16年改正の「本来の年金スライド」を「マクロ経済スライド」と誤って説明していたので、修正を行った。

0 コメント:

コメントを投稿