2014年10月30日木曜日

今のアフリカはこんなもんだと分かる『経済大陸アフリカ』

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

身近にアフリカ出身者はそうはいないであろうから、日本人から見て心理的に遠い地域と言えばサブサハラ・アフリカだと思う。今度のエボラ出血熱の広がりで、リベリア、ギニア、シエラレオネの位置を地図で確認した人は多いはずだ。また、『ホテル・ルワンダ』と言う映画があったが、政治的に不安定な危険地域で経済的に停滞しているイメージがあると思う。しかし、近年の資源高でサブサハラ・アフリカの経済状況は変わりつつあるらしい。この変化を包括的に論じたのが、「経済大陸アフリカ」だ。広大なアフリカ大陸の現代事情を叩き切るという無理がある内容で、中国のアフリカ関与を最初の章に持って来るなどキャッチーな面もあるが、一般書としてはバランスが取れた本になっていると思う。

2014年10月29日水曜日

日本の高等教育に必要で簡単に実現できるモノ

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

先日のエントリーで戦略コンサルタント冨山和彦氏の大学教育の階層化構想の問題点を指摘したところ、「現状がいい/マシと言いたいのだろうか?」と言うコメントをもらった。答えはYESで、冨山提案よりは現状の方がましだと思う。しかし、現状に改善の余地が無いとは言えない。(1)大学教育が職業教育に適していないと言う不満が産業界から、(2)入学者の質が悪く大学教育が満足に行なえないと言う不満が大学側から出されているのが現状だと思うが、高校卒業試験を行い成績証明書を出せば、これらの問題は解決すると思う。

2014年10月26日日曜日

戦略コンサルタントが教育を語るとこんな事になる

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

文部科学省の実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議で提出された、戦略コンサルタント冨山和彦氏の「我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る高等教育機関の今後の方向性」が一部で話題になっている。

産業をグローバル(Gの世界)とローカル(Lの世界)に分けて、それぞれに必要な人材が異なるとし、それぞれのタイプの人材に適応した教育を行おうと言うのが趣旨だが、色々な部分で戦略コンサルタントらしい頭の悪さを発揮している。それっぽいが辻褄のあった議論が出来ていないし、現実も見ていない。

2014年10月24日金曜日

イスラエルでは少人数クラスの方が好成績!

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

イスラエルでのクラスの人数と成績の関係を分析した論文Angrist and Lavy(1999)が話題になっていたので、ざっと眺めてみた。どこの世界にも親馬鹿がいて、成績の良い子を少人数クラスの学校に転入させようとしたりするので同時性の問題が発生し、信頼性のある計量分析が難しい。しかし、イスラエルではマイモーン・ルールと言う機械的な人数決定方式を採用しており、また私立学校が極めて少ないので、これを上手く使う事でこの同時性の問題を解決しようとしている、目の付け所が売りのペーパーだ。QJEなので一流誌。

2014年10月22日水曜日

在日韓国・朝鮮人の特別永住権を正当化できない社会学者

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

橋下大阪市長が特別永住者の法的扱いに疑問を投げかけたことに対して、関西学院大学の金明秀氏が反論をしている(SYNODOS)。相変わらず民族的自尊心が重要らしく、特別永住者が日本にいることの正当性を主張し、その被害者性を強調している。残念ながら、上手く書けていない。

冗談のような作文だ。在日韓国・朝鮮人は植民地朝鮮から内地への密航者ではあるが、日本国籍を持っていたので不法入国者ではないと言う分かりづらい正当化をしている。大差ない。また、「特別永住資格とは、はたして《日本人にはない特権》というべきものなのだろうか」と他の永住外国人には無い特権と言う批判を無視した問いを立てている。

うわぁ、ノビーがまたやっちゃってるー

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

と、経済評論家の池田信夫氏の「アベノミクスの挫折で深まる安倍政権の危機」と言う記事がつっ込まれていた。いつも通りミスの多い記述で、少なくとも四箇所、おかしいところがある。

まず、用語定義。「財政・金融政策で需要を追加しても、供給不足が悪化してコストプッシュ・インフレになるだけだ」とあるのだが、こういう場合は普通はディマンド・プル・インフレーションと言う。池田氏が普通かは存じないが。

2014年10月20日月曜日

楽天の英語勉強法は4年間でどれぐらいの効果があったのか?

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

楽天の英語勉強法 TOEIC平均255点アップ』と言う記事が話題になっていた。内容は2010年10月に平均526.1点だった楽天社員のTOEICスコアが英語学習によって、2014年6月に平均781.9点まで上昇したと言うものだ。胡散臭い提灯記事ではないかと、各方面から疑問視されていた。

お気づきの通り、この記事には統計学的に問題がある。企業の従業員は入退社で入れ替わっていくので、母集団が同じとは言えないから、勉強の効果と言うよりは、新入社員の英語力によって平均引き上げになった可能性がある。楽天の新入社員のTOEIC平均点は827と公言される*1一方で、平均勤続年数は3.8年*2となっている。これを加味して、古参従業員の英語力がどれぐらい向上したかフェルミ推定してみよう。

2014年10月16日木曜日

世論調査なんて無視しておっけー、有権者なんてついてくる

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

有権者の意向を気にする政治家は多いと思うが、そう細かく気にする必要は無いかも知れない。少なくとも二名の政治学者、カリフォルニア大学バークレー校のBroockman氏とセントルイスのワシントン大学のButler氏が行なった社会実験では、有権者は政治家が自身が支持しない政策を取ろうとしていても、政治家への評価は変えないそうだ(ft.com)。

2014年10月15日水曜日

歯を食いしばって勉強したい人のための伊藤清三『ルベーグ積分入門』

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

確率論やフーリエ解析などの応用分野でよく見る数学の裏側には、ルベーグ積分と言うモノが潜んでいる*1。中高までが基本とするリーマン積分では極限操作が扱いづらいなどが理由だが、これを真面目に勉強し出すとそれなり骨が折れるものだ。ただし定番と言われる教科書、伊藤(1963)『ルベーグ積分入門』がある。著者の伊藤清三氏は東大の教官だった人で、この教科書に関連して有名な駄洒落を残している*2

2014年10月12日日曜日

消費税率引き上げの景気への影響はどの程度?

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

雇用情勢は引き続き堅調に思える*1が、消費税率引き上げで不況になったと言う言説は良く見かけるようになったし、内閣府も景気判断を下方修正し、先行きに不透明感はある。しかし、実際にどのように不景気なのかが曖昧な気がするので、SNSでの言い争いに備えて関係ありそうなデータを整理してみた。景気の先行きに不安はあるのだが、とりあえず消費税率引き上げの影響は限定的なように思える。

2014年10月7日火曜日

稲葉氏が「まだ詰められんかなあ。と思うんですが」と言うのでスウェーデンのマクロ金融政策小史を確認してみた

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

前のエントリーで松尾氏とは十分に意見交換をしたと思うものの、稲葉振一郎氏がスウェーデンのマクロ金融政策で何かもやもやしているようなので、蛇足(右写真参照)的にちょっと材料を探してみた。ついでに紀要論文の再校までに届くかも知れない。

さて、BISのスウェーデンに関する資料を引っ張ってこよう。"Karolina Ekholm: Why Swedish monetary policy needs to be more expansionary"と言うタイトルで、スウェーデンの中央銀行になるリクスバンクの副総裁のスピーチ。大本営発表にはなるが、事実関係に誤解は無いはず。しかも個人的にと前置きして、拡張的金融政策に理解を示しているから、現状追認をしたがっている人ではないようだ。

2014年10月5日日曜日

りふれ派はスウェーデンに触れてはいけない

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

スウェーデンがマクロ金融政策で労働需要を増やし完全雇用を目指しているかのような話がマルクス経済学者の松尾匡氏のSYNODOSの記事に書かれていて、その内容を左派リフレ派を名乗る人がツイートしているのを見かけたのだが、どうも上手く騙されていて面白い事になっている*1。書かれているように、1993年に通貨防衛政策を諦めたので、その時に金融緩和になったのは間違いないのだが、雇用水準を目標に置いているわけではなく、たまたまに思える。また、財政的にも総需要管理政策を取っているようには思えない*2

2014年10月4日土曜日

高所恐怖症は登校拒否になるしかない

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

人口過疎地域では居住地付近に学校があるとは限らず、何Kmも歩いて通学しないといけないときもある。ネパールやコロンビアでは通学路に川が立ちはだかり、それを超える橋もないので、ロープを伝ったりゴンドラで超えたりしているそうだ。危険性は高く、落下する人もそれなりいるらしい。