2014年7月14日月曜日

万人が知るべき10のよくある間違った論証方法

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"Ten Common Fallacies Everyone Should Know"と言うページで、万人が知るべき10の良くある間違った論証の方法を解説していた。インターネット界隈での議論でも良く見かけるものばかりで、議論に負けないために議論をしている非建設的な人々の論証方法のまとめになっている。馬鹿発見器として有用なので、説明の一部を元ページから拝借しつつ、項目を一つ一つ見て行きたい。

1. 人格攻撃(Ad Hominem)

議論の内容ではなくて相手の人格に基づいた批判を行うのは誤りだ。主張を批判されると侮辱されたと感じて、我を失う人も少なくなく、ネット界隈では良く見かける。間違いを指摘されると、ツイッターなどで指摘した人の性格や能力を根拠不明な中傷する経済評論家がいるが、それもこの部類に入ると思われる。後述する(7)と(8)の会わせ技のひとつだが、よくあるので独立した項目になっているのであろう。

2. 権威を笠に着る(Appeal to Authority)

著名な学者が言ったから、それは正しいと言う主張。専門家の意見は素人のそれより正しい可能性は高いが、議論としては中身を理解していないと意味が無い。社会学者が比較的良く使う*1。立派な本の名前をあげて、そこに書いていない事を主張しだす経済評論家がいるが、それもこの分類に入るのであろう。

3. 無知に訴える(Appeal to Ignorance)

否定されていないから、肯定されると言う論法。否定も肯定もされない状態を理解しない。例えば「幽霊がいない事は証明されていないから、幽霊はいる」と言ったものになる。偽科学や公害問題などで、この種の論法を使う人は多い。相手に存在しないことを証明しろと迫る悪魔の証明もこの部類に入るのであろう。

4. 衆人に訴える(Bandwagon fallacy)

「みんながこう言っているから、こう」と言うお子様論法。大多数の人が信じることには、それなりの理由があるものが多いが、例外も数多くあるので議論の上では役に立たない。お子様論法のままでは見かけないが、「世論調査で○○○に反対している人の割合が多いから○○○は間違っている」「10万人がデモに参加して反対したのだから○○○は間違っている」と言う主張もこの部類に入るであろう。なお、英語と言うかラテン語でargumentum ad populumとも言う。

5. 循環論法(Begging the Question)

「聖書は神の言葉だ。聖書にそう書かれている」といった論法。トートロジーとも言われる。さすがに明確な形では見かけることは少ないが、元ページにある「どうやって彼が馬鹿だと知ったかって? ─ 彼はあらゆる事に無知なんだよ」と言うような言い回しは良く見る。具体的に彼の愚かな言説や行為を例示すべきところで、馬鹿と言う単語の意味を説明してしまっているわけだ。

6. 誘導尋問(Loaded Question)

思い込みもあるので良くやってしまうと思うが、間違った事、相手が同意していないことを前提に質問を行うのは正しい論法ではない。犯行を否定している被疑者に、どうやって被害者を殺したのか聞くのは間違っている。こう書くと術中にはまる人は少ないように思うが、「身体に悪いのに、どうしてウナギを食べるの?」と聞かれたら「美味いから」と答えてしまい、ウナギが身体に悪いと言う命題を肯定してしまう人は少なくないはず。

7. 根拠と主張の乖離(Non sequitur)

前提から演繹できない結論を主張する支離滅裂な主張、理由になっていない理由も良く見かける。例えば「原子力は危険である。再生可能エネルギーは有望である。」と言う言説を考えてみよう。原子力は危険であることから演繹できるのは、原子力が見込みがないと言う事であって、他のエネルギー源については何も言えない。

追記(2017/11/04 00:21):立証が困難な主張(bailey)に対する批判を、しっかり論証できる主張(motte)に摩り替えて反論することで誤魔化すモット・アンド・ベイリー論法も、これの一形態と言えるであろう。

8. 話を逸らす(Red Herring)

夫婦間、またはSNSで最も良く見かけるタイプだが、主張が通らないと分かると論点を逸らしていって議論を有耶無耶にしてしまう人は多い。家計の使い込みの話が隣家の夫婦仲の話にかわったらすぐわかるが、現在の太陽光パネルの収益性の話が未来の収益性の話にかわっても気づかないかも知れない。

9. 飛躍する議論(Slippery Slope)

勝手に状況がエスカレートすることを当然としてしまう議論。元ページの例では、「一度、この銃規制法案が通ったら、全ての銃器を没収する他の銃規制法案も通ることになる」と言うのが例に挙げられていた。日本人としては、戦前の東條英機大将の「米国ノ主張二其儘服シタラ支那事変ノ成果ヲ壊滅スルモノタ、満州国ヲモ危クスル更二朝鮮統治モ危クナル」と言う主張を思い出す。

10. 藁人形論法(Straw man)

誰かの主張を批判されているときに、問題とされている主張が捏造・改編されたものである事は少なからずある。これを藁人形論法と言う。捏造・改編といえなくても、前後が切り捨てられている場合も含まれるであろう。理解力不足の批判者は、かなり頻繁かつ無意識にこの問題を引き起こすし、政治目的のある人も同様の行為を行う傾向がある。

まとめ

良くあるケースが列挙されている。「詭弁論理学*2に似たような記述があるが、リストされているとまた味わい深い。意図的にやっているケースもあると思うが、ナチュラルにこういう論法を使う人は少なくないようなので、このリストはバカ発見器として有用であろう。なお、大半の論理的な間違いは論理和や論理積、逆、裏、対偶や包含関係を意識していたらそうは引っかからない。つまり、ある程度の訓練を受けた人には通用しないので、悪用することはお勧めしない。

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