2013年10月26日土曜日

労働需要はGDPの従属変数? ─ 古典的ケインズ経済学ですか

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経済評論家の池田信夫氏が『【再掲】需要と供給』で「労働需要はGDPの従属変数」と主張している。前半と後半の議論が続いているものかが良く分からないのだが、もしそうだとすると池田氏が学部レベルのマクロ経済学だとバカにしている古典的なケインズ・モデルになっている。

前半部分は「明らかに雇用=労働需要が不足しているので、賃金を下げれば雇用は増える」とあるように、賃金水準が雇用量を決定していると主張している。しかし後半部分では「GDPが上がると、需要需要がD'のように外側にシフトし、賃金もw'に上がって雇用も増える」と主張しており、賃金を均衡賃金に近づけるのではなく、均衡賃金を賃金に近づけるべきだと主張している。

ここで古典的なケインズ政策を思い出そう。賃金や価格には下方硬直性があるため、雇用量を増やすには総生産量を増やすしかないと言う事になっている。マクロ経済政策で雇用対策をするしかなく、これは池田信夫氏が否定しているリフレ派(e.g. 経済思想史家・田中秀臣氏)の主張と合致する。ところが池田信夫氏がエントリーで主張していることと一致している。

なお労働需要がGDPの従属変数だとしても、モデル全体で見ればGDPもまた何かの従属変数になっている。IS-LMモデルでは投資や金利で決定される。労働需要を引きあげるには、財政・金融政策が必要だ。しかし、池田信夫氏は財政・金融政策に否定的であったはずで「雇用を増やすにはGDPを高めるしかない」と安易に言っていていいのであろうか。

新古典派経済モデルと言うか標準的RBCを前提に考えれば、常に労働市場の需給は均衡しているし、一時的に失業者が溢れていても自動的に定常状態に戻ることになる。5年間というからリーマン・ショック後に書かれたエントリーの再掲のようだが、日頃の立ち位置からすると失業は放置していたら解決すると言うべきだったのでは無いであろうか。

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