2013年10月8日火曜日

裁判所が在特会の“人種差別”を認定

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広く報道されているが、京都朝鮮学校公園占用抗議事件に関して在日特権を許さない市民の会(在特会)らのメンバー9名に対して損害賠償を命じる判決が下された。既に被告たちは威力業務妨害で刑事事件として有罪になっており損害賠償命令は意外ではないのだが、その判決理由が興味深いし、人種差別撤廃条約の解釈が独特になっている。

判決文を聞き取った人によると、以下のような理由がつけられていたらしい(在特会・京都朝鮮学校襲撃事件、民事判決概要)。

差別意識を世間に訴える意図の下、在日朝鮮人が日本社会で日本人や他の外国人と平等の立場で生活することを妨害しようとする差別的発言を織り交ぜてされた人種差別に該当する行為

我が国の裁判所に対し、人種差別撤廃条約2条1項及び6条から、同条約の定めに適合する法の解釈適用が義務づけられる

名誉毀損等の不法行為が同時に人種差別にも該当する場合、あるいは不法行為が人種差別を動機としている場合も、人種差別撤廃条約が民事法の解釈適用に直接的に影響し、無形損害の認定を加重させる要因となる

三つ疑問が出てくる。(1)どの行為を名誉毀損と認定したのか。(2)どの発言を人種差別と認定したのか。(3)人種差別撤廃条約を理由に損害を大きく見積もって良いのか。

被告らは朝鮮学校の公園の不法占拠を批判していたわけだが、それ自体は朝鮮学校の元校長が2010年に略式起訴をされ罰金を言い渡されているため、批判自体は正当性がある。すると朝鮮学校周辺で抗議活動を行う事が名誉毀損だと認定されたか、メッセージの一部が名誉毀損に該当すると見なされたのか。

被告らの発言は、在特会側のビデオを見ている限りは、何が人種差別なのかが明確ではない。「北朝鮮による侵略行為を許すな」「我々の先祖から奪った土地を返せ」「勧進橋の土地を京都市民の手に取り戻すぞ」「日本の法律を遵守できないのであれば、どうぞ、地上の楽園にね、北朝鮮に帰ってくださいよっと言う話なんですよ」のどれが人種差別にあたるのであろうか。

人種差別撤廃条約がヘイトスピーチを規制しているのか、そして損害賠償額を大きく見積もる根拠になるのかが分からない。2005年に康由美弁護士入居差別裁判で、国籍事由による入居拒否は人種差別撤廃条約に違反するとされ、大家が損害賠償を払った事例がある。しかし、損害額を大目にすべきと言う判決ではなかったはずだ。そして、ヘイトスピーチはメッセージの問題なので、条約で定義される「区別、排除、制限又は優先」*1に該当するのかが分からない。

「日本の法律を遵守できないのであれば、北朝鮮に帰れ」と言うメッセージが「排除」にあたるので、「日本の法律を遵守しろ」までしか言ってはいけないと言う判決なのであろうか。判決文全体を読まないと理解できないのであろうが、かなり危うい論理構成になっている可能性がある。

*1人種差別撤廃条約で人種差別は以下のように定義されている。

第1条1 この条約において、「人種差別」とは、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するものをいう。

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