2013年5月6日月曜日

GDPデフレーターの要因分解と企業物価指数

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himaginary氏が「交易条件がGDPデフレータに与えた影響」を分析している。不勉強なせいか、騙された感じがしてならない。

交易条件は、輸出価格指数/輸入価格指数で、原油の輸入財や自動車などの貿易財に影響されるものだが、これがGDPデフレーターにどう影響するのかが自明でないからだ。要因分解をしても、少なくとも私には解釈が出来そうに無い。

1. 企業物価指数を確認する

まずは輸入物価や輸出物価を観察するために、himaginary氏のエントリーに無い、企業物価指数を見てみよう。デフレ元年は1998年が通説なので、1997年基準とする。

輸出物価指数は長期低落傾向で、GDPデフレーターと傾向が近い。輸入物価指数は、資源価格の高騰をそのまま表している。国内企業物価指数は、消費者物価指数(CPI)と傾向が近い。

契約通貨ベースも、確認しておこう。

輸出物価指数が2003年ぐらいから下げ止まっているが、外国通貨はインフレ傾向があるので、平行線は相対価格の下落を意味する。「製品を安価で輸出」しているとは言えるであろう。

2. 企業物価指数とGDPデフレーター要因分解の乖離の原因

GDPデフレーターは、付加価値に対する物価指数となる。大雑把に、製品価格-原材料価格だと理解していい。ここから非直感的な現象が色々と発生する。二つ、例を考えてみよう。

  1. 原材料価格が上がったとき、製品価格にそれを転嫁しきれないと、GDPデフレーターは下がる。消費者物価が上がって、GDPデフレーターが下がるわけだ*1
  2. 製品価格が下がったとき、原材料価格も下がれば、GDPデフレーターは下がらない。これは複雑な状態をもたらす可能性がある。輸出価格が低下しても、部品価格の低下に転嫁されれば、輸出要因は変化せず、国内要因がマイナスになる。

himaginary氏作成の要因分解の図も、その解釈が難しい。輸出要因が輸入要因に転嫁する事は少ないであろうが、輸出入要因と国内要因の境界は曖昧だったりしないであろうか。

2000年~2008年ぐらいの日本を見てみると、原材料の輸入価格があがって、輸出価格が下がっているのだから、生産技術が一定であれば、GDPデフレーターは減少となる。また、リーマンショック後を見ると、輸出物価よりも輸入物価の傾向の方が不安定なようだが、全般的な傾向に大きな変化は見られない。

3. まとめ、もしくは自戒

エネルギー効率の改善などの技術革新もあるであろうし、交易条件がどの程度の影響を与えているかは慎重な議論が必要だと思うが、himaginary氏の見解とは異なり、齋藤誠一橋大学教授の「国際競争の激化で競争力を失った製品を安価で輸出」が当たっていなかったとは言えないと思う。

何はともあれGDPデフレーターは、CPIなどと比べて非直感的な数字なので、解釈には気をつけないといけないようだ。パーシェ指数なので変化率が大きめに出る癖もある。

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