2013年5月11日土曜日

2位じゃダメなんでしょうか? ─ 1番速いスパコンの必要性を考える

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スーパーコンピューターの利用技術の継承が目的だったはずが、いつの間にか世界最速を達成した「京」である*1が、次世代計画が持ち上がっているらしい。1,000億円かかるそうだ。参院議員の蓮舫氏と同じ疑問がわきあがる。2位じゃダメなんでしょうか?

研究成果が一番と、計算速度が一番は同じ事を意味しない。世界最速のスパコンを動かしたい分野もあるはずだが、そこそこ速いコンピューターで十分に研究できるケースも多い。2010年12月に完成した米空軍研究所(AFRL)の計算グリッドは、1,760台のPlayStation 3を接続することで、当時最速の天河1Aの1/4の速度を、200万ドル程度で実現している*2。電気代も安いそうだ。

そう、電気代は問題だ。2009年に世界最速スパコンと名を轟かせたRoadrunnerは、4年間の運用後に電気代を理由にスクラップにされた*3。開発費は1億ドルもかかったと言うのだが、費用対演算速度は極端に悪かった。しかし、1番速い汎用スパコンは、こういう運命にあるのであろう。

科学技術に予算を投じる必要性はある。しかし、毎年何百億円も国費を投じるのであるから、その成果について吟味する必要があるし、1番ではない演算能力で問題があるのかは議論すべきであろう。「京」の後継プロジェクトをどうすべきかは、やはり「京」の出した研究成果に対する貢献で考えるべきだ。

もしかしたら、最速のスパコン1台よりも、使い勝手の良い中小規模計算グリッド数百台の方が、ずっとニーズがあるかも知れない。汎用ではなく専用システムの方が、廉価に目的を達することができるかも知れない*4。文系でも一般化入れ籠ロジットモデルを使った計量分析などで何時間も待っている人がいるのだが、そういう人はスパコンを使うほどでも無いであろう*5。理系でもそういう人々の方が多いかも知れない。

*1技術立国ニッポンの虚像が露呈した」 で計算機科学者の東京大学の金田康正教授が指摘している。

*2PlayStation 3で構成されたスパコンが拡張される

*3「2009年の世界最速スパコン」が引退、粉砕処理へ』「米エネルギー省のIBMスーパーコンピュータ、ペタFLOPS級の持続性能を達成

*4長崎大学の浜田剛准教授らのチームは、画像処理プロセッサ(GPU)を大量に接続した数千万円のシステムで、高い演算速度を叩きだし2年連続で権威あるゴードン・ベル賞を受賞している。

*5そもそもStataなど、ソフトウェア的に遅いものを駆使している場合、計算機グリッドで処理速度が上がるのかは良く分からないが、産業組織論などの研究でグリッドを用いているものもある。

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