2013年1月16日水曜日

年金改革~「できること」と「できないこと」

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RIETIの中田大悟氏の新春エッセイが出ていたので拝読した。内容を簡単に紹介しつつ、感想を述べたい。

まず中田氏は、現実的な年金政策の三つの条件を整理している。つまり、民主党政権の年金改革を総括し、(1)制度的な継続性が無いと実現可能性が無いことを強調しつつ、(2)現役時代の就業履歴で年金給付に差がつかないこと、(3)年金制度内で十分な所得再分配機能が働くことが国民に支持されたと見なしている。

1. 国民年金のみの非正規労働者の貧困化

さて、年金制度改革は、少子高齢化の影響から急務となっている。現在の状況では、相当程度の年金給付水準の減額が必然であり、国民年金の給付水準は悲惨な水準まで低下する。つまり、国民年金しか加入していないパートタイムなどを含めた非正規労働者は、非正規労働者の貧困化が必然となるわけだ。厚生年金と共済年金の適用拡大が必要となるであろう。

2. 厚生年金/共済年金の非正規労働者への適用拡大

以上の状況を踏まえて、中田氏は基礎年金と報酬比例年金を完全分離し、厚生年金と共済年金を完全な報酬比例年金化して、非正規労働者全体に厚生年金/共済年金の適用を拡大することを提案している。被用者年金の事業主負担の存在から、自営業者に厚生年金/共済年金の加入を促進する事は難しい事は認めつつも、自営業者には定年が無いので大きな問題ではないと主張している。

3. 就業履歴に関係の無い制度で所得再分配機能を強化

厚生年金と共済年金の適用拡大が実現できれば、(2)と(3)を改善することができる。つまり、正規/非正規と言う現役時代の就業履歴と年金制度は関係なくなり、適用拡大された厚生年金と共済年金によって非正規雇用だった人々への所得再配分を実現する事ができる。これによって将来の生活保護受給世帯を削減することができる見込みだ。

4. 年金制度によって貧困対策を行う必要性の議論が欲しい

感想を述べたい。年金制度によって貧困対策を行う必要性がある事を、もっと説明して欲しい。高額所得者にとっては租税で生活保護費を賄うのと、年金の所得再配分機能の強化は同じ事かも知れない。引退世代の高齢者間の所得移転が必要になる点や、生活保護受給者になることの社会的スティグマに関する議論がないと、説得力に欠ける気がする。

5. 社会保障制度改革国民会議の設置は評価するべき

小さいことだが基礎年金の払い忘れなども問題としては生じそうだ。また、民主党政権を批判しているが、安倍総理のこの問題への無関心*1を考えるに、野田政権が社会保障制度改革国民会議を残していったことは評価に値するであろう。文がまとまらなくなりそうだけれども。

*1選挙前の安倍総裁への「Q2 若い世代も安心して暮らせる社会保障制度についてどのようにお考えですか?」と言う質問の以下の答えは、現状を認識しているように思えなかった(Google 選ぼう 2012)。

給付と負担のバランスがすべてなんですね。既に年金については、もうこのバランスを調整してあります。あとは、医療については、治療から、予防へシフトしていく。そうしたことも含めてしっかりやっていきたいと思います。

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