2013年1月10日木曜日

不毛な「インフレ目標論争」をしていたのは池田信夫

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経済評論家の池田信夫氏が『不毛な「インフレ目標論争」はもうやめよう』と言い出している。要約すると、以下のような主張のようだ。

  1. 中央銀行が目標インフレ率を積極的に達成する手段を持たない
  2. インフレ目標は中央銀行に実現義務があるように政治的に曲解されるので良くない
  3. 名目GDP目標値に達するまで中央銀行がゼロ金利を続けるべき

(3)が中央銀行のコミットメント効果を狙ったもので、景気回復時の早すぎる金融引済を恐れて需要が縮むのを防止し、投資を拡大する効果があると考えられている。Krugman(1998)*1やEggertsson and Woodford(2003)で理論的に議論されているものだ。Woodford(2012)でも、当然、言及されている。

1. ようやくインフレ目標政策を理解?

池田信夫氏も時間軸効果と認識しているが、それがインフレ目標政策の狙いだとは理解できていなかったようだ。ずっとインフレ目標政策批判として、目標インフレ率を実現できないと、不毛な「インフレ目標論争」をしていた。また、高橋洋一氏の言うインフレ目標政策*3が、他の論者のインフレ目標政策と異なると批判する事も無かった*4

2. 過激派のように論敵の主張を考察する事を放棄

池田信夫氏はかつてマルクス経済学にはまっていた事があるそうだが、論争を闘争に取り違いクルッグマンらの主張を真面目に考えることを放棄していたように思える。「しょっちゅう意見を変えるクルーグマンだが、今度は自分の1998年の論文を全面的に否定している」なんて、明らかにおかしい事を言ってしまうわけだ*5

3. Woodfordの主張を認めると言う事は、クルッグマンの主張を認めることになる

Krugman(1998)はゼロ金利になったら短期的にマネータリーベースを増やしても無駄で、長期コミットメント(つまり将来のマネータリーベース拡大)が大事だと主張している。Eggertsson and Woodford(2003)は、それをNK-DSGEで理論的に精緻化した。Woodford(2012)は、現実的な解として、名目GDP水準目標を推奨している。だからWoodfordの主張を認めると言う事は、クルッグマンの主張を認めることになる。

4. 誰が不毛なインフレ目標論争をしていたのか?

誤解を元に不毛なインフレ目標論争をしていたのは誰かは、もう池田信夫氏も分かっているはずだ。

2 コメント:

POM_DE_POM さんのコメント...

僕の池田氏の「解釈」を巡るコメントも、不毛そうなのでこの辺にしようかと思いますが^^;


>高橋洋一氏の言うインフレ目標政策*3が、他の論者のインフレ目標政策と異なる
恐らくポイントはここで、uncorrelatedさんの言ってるインフレ目標(本来はこちらが正しい)と世間知のインフレ目標は異なる、という事です。
高橋氏、ならびに池田氏が使っているインフレ目標は世間知のインフレ目標で、昨今の安倍首相やネットでの議論(珍しく、ヒロさんのブログにもコメントされてたようですが、あの記事もそうですね)も世間知のインフレ目標を使っています。

こうした状況下で、特定の論者だけを抜き出して「その使い方はおかしい」と指摘しても、違和感を感じてしまう訳です。
(もし個人を攻撃するなら、世間知のインフレ目標を”推進”している側の人間で在るべきでしょう)


記事中の1、3についてですが。
新しい記事を見てもコミットメントや期待については何も触れておらず、Woodfordも量的緩和の有効性を否定する部分を「つまみ食い」しているだけに見えます。

「2%のインフレ」を実現する責任は内閣にある
http://blogos.com/article/53734/?axis=g:0


>不毛なインフレ目標論争をしていたのは誰か
「みんな」でしょうね。

uncorrelated さんのコメント...

>> POM_DE_POM さん
> Woodfordも量的緩和の有効性を否定する部分を「つまみ食い」しているだけに見えます。

最後まで読んでいない気はしますね。
最後だけ読めばいいはずなのですが。

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