2012年12月12日水曜日

米とこんにゃくの税率を安倍晋三は正当化できるのか?

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日本最大の圧力団体である農協が怖いのか、自民党も民主党もTPPへの言及は曖昧だ。あえて言うと、自民党の方が安倍総裁が農業分野の保護に言及している。「農業への影響を最小限に抑えるよう配慮する考え」だそうだ(NHK)。

TPPは、明確に稲作農家など特定の作物を育てる農家の問題になっている。医療制度に影響が及ぶと言っているが、参加各国の医療制度はばらばらで統一できる見込みなんて無く*1、漁業者が困ると言うが漁業の関税率は4.8%~15%しかなく既に輸入比率も高い*2ISD条項が話題になるが、これも特定国に有利と言うわけでもない*3

安倍氏の「守るべき聖域」は農業と言う事になるが、これは消費者の事を全く考えていない。800円/Kgのこんにゃく芋の荒粉を輸入しよう。まず一次関税が40%、つまり320円かかる。一定数量を超えると二次関税2.796円がかかる。最終的には5倍弱の3,916円/Kgになるわけだ。これは国内販売価格よりも高い。米や小麦、大豆も同様だ。

食料安全保障で正当化しようとする人もいるが、現代農法には肥料と機械がいる。つまり、肥料原料と原油の輸入が無ければ、食料自給率を幾ら上げても無駄だ。原油はもちろんの事、三大肥料である窒素、リン酸、カリウムの原料もほぼ全てを輸入に頼っている。

農業の事を考えているかと言うと、そうでも無さそうだ。「守るべき聖域」は既に自壊しつつある*4。平均所得が平均37万円しかない非主業農家が全体の8割を占めるし、1976年には489万戸あった農家だが、2009年には170万戸まで減少している。しかも、農業従事者の高齢化は進んでおり、最も多い年代が70代となっている。そして、必ずしも国際競争に負けるとは限らない*5

TPP参加で関税自主権を喪失するかも知れないと強調する安倍総裁は、どういう理屈で一部の農作物への高関税率を正当化するのであろうか。農協の延命のため*6に消費者を犠牲にするのは、輸出入企業がTPPで享受できる利益も失うことになるし、道理が通らないと思われてしまうかも知れない。

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