2012年12月10日月曜日

だからノブリン、現代の動学マクロ経済学にも通貨供給量という変数はあるってばよ

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経済評論家の池田信夫氏が「現代の動学マクロ経済学には、通貨供給量という変数は出てこない」と書いたエントリーに対する疑問へ、長々と弁明している。しかし、論点をずらしている事にしかなっていない。

『現代の動学マクロ経済学』が何を意味するのかが分からなくなってくる弁明だが、示されていた参考文献がWoodford(2003)なので、2003年以降の動学マクロの論文で、通貨が入ったモデルがあれば池田主張は崩れる。

Auerbach and Obstfeld (2005) "The Case for Open-Market Purchases in a Liquidity Trap" と言う、経済学では一流雑誌のAmerican Economic Reviewに掲載された論文の一部分をコピペしよう。

money(M)があるので、通貨はそこにある。現代の動学マクロ経済学にも、通貨供給量という変数は出て来る。有る無し論争は発見したら終わりなので、詭弁を弄しても無駄だ。

中身は東京大学の岩本氏の紹介によると、満期までゼロ金利ではない長期国債を保有すると通貨発行益が生まれるので、将来の貨幣の増加に効果があると考えられ、国債買いオペの効果があると言う内容だそうだ。

池田氏が『Woodfordは「基本モデルでは現金を考えない」と宣言』と言っているが、そのWoodfordが書いたEggertsson and Woodford(2003)にも通貨はそこにある。こちらは国債買いオペよりも、テイラールールの変更が有効と言う主張。

買いオペで通貨供給量を増やしたときの効果を見るのに、通貨供給量と言う変数が無かったら議論が成り立たないでは無いか。なお変数が有るか無いかなので、池田氏がしている金融調節の目標の話は関係ないし、財政ファイナンスの話も関係ない。

FTPL(Fiscal Theory of Price Level)

なお通貨供給量が無いモデルでインフレーションを議論するには、別の議論(FTPL)が必要になるそうだ。FTPLでは、財政状態がインフレ率をほぼ決定する一方で、金利(連動して通貨供給量)もインフレ率に影響を与える(河越・広瀬(2003))。金融政策よりも、財政ファイナンスのインフレ効果を主張している池田信夫氏向きの議論。

ただしFTPLにも弱点があって、単純に考えるとゼロ金利で財政赤字があればインフレになるそうだ。デフレを続けている日本経済をうまく説明しているようには思えない。おっと河越・広瀬(2003)のFTPLの説明にも、通貨供給量という変数はあったから、池田信夫氏はコレは使えないのか。

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