2012年9月8日土曜日

維新の会の党綱領『維新八策』の藁人形論法、もしくは不整合な点

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日本/大阪維新の会の党綱領として『維新八策』が最終案として公開された(日経)。選挙対策もあるのだろうが、藁人形論法、もしくは不整合な点が散見される。もともと小さな政府による地方分権を主張していたのだが、橋下氏の持っている政策セットに大きな政府による中央集権的なものが多く、一貫性を持つのが難しくなっているようだ。

維新八策ではまず、『中央集権型国家から地方分権型国家へ』と言う理念を置いて、『国の役割を絞り込み』としている。しかし、続く部分で国と地方の役割分担が明確にされているわけではないし、『小さな政府』を意識しているようにも思えない。

教育問題は、国と地方の役割分担で不整合な点がある。『格差を世代間で固定化させないために、世界最高水準の教育を限りなく無償で提供する』と国が方針を決める一方で、『文科省を頂点とするピラミッド型教育行政から地方分権型教育行政へ』と地方行政の役割としている。『国の仕事は国の財布で、地方の仕事は地方の財布で』とあるので財源は地方へ丸投げのようだが。大きな政府なのは間違いない。

社会保障は、恐らく国の役割だと思うのだが、これも中央集権型の大きな政府に思える。『世代間・世代内不公平の解消』と言っており、大きな政府を志向している。全般的に整合的でもない。『高齢者・障害者サポートと現役世代サポートの区分け』と言いつつ、『高齢者はフローの所得と資産でまずは生活維持(自助)』と言って、貧困層以外への年金支給を排除しているので、実は高齢世帯と現役世代の扱いが同じだ。『社会保険への過度な税投入を是正、保険料の減免で対応』も、保険料を減らしたら国税負担が増える気がする。所得等で保険料の減免措置を行うとすると、『超簡素な税制=フラットタックス化』と矛盾する。また、障害者をどう扱うかは言及が無い。

非現実的だなと思う主張もある。税制や社会保険制度で、『少子高齢化に対応→フロー課税だけでなく資産課税も重視』『所得と資産の合算で最低生活保障』と保有資産の追跡を前提としているので、それが困難である事を認識していないようだ。スウェーデンでは相続税および贈与税法を廃止している。相続税や利子所得課税を強化する方向なのであれば、現実的だとは思うが。もちろん資産課税を行う政府が、小さな政府になるかは議論の余地は大きい。

藁人形論法になっているのは、公務員と地方自治体の記述だ。『倒産のリスクを背負う自治体運営』『自治体破綻制度の創設』とあるが、今でも地方自治体は財政再建団体になる。『公務員を身分から職業へ』は、法的に公務員が他の職業と大差の無い身分保障である事を認識していない。また、『若手時代は官庁間異動を原則』は、実態としての公務員が身分であることを肯定している。若手から中堅に内部で育てていくことが前提だからだ。

他にも色々とあると思うが、まずは橋下氏が指向するトップダウン型の改革、つまり『難問を先送りせず決定できる統治機構』は、地方分権型国家に向いていない事を認識するべきかも知れない。『内政は地方・都市の自立的経営に任せる』とあるが、これは地方の了解を取らないと国は何もできなくなる。橋下氏が内閣を構成したとして、その提案を全力で拒否する首長が出たときに、地方分権型国家と割り切ることが出来るのか。橋下氏は大阪府知事時代には大阪市長の反対を二重行政だと批判していたわけだが、地方分権型国家はまさに二重行政を強化する事になる。

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