2012年8月6日月曜日

経済評論家・三橋貴明のTV番組での放言に関して

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TV番組「たかじんのそこまで言って委員会」での経済評論家の三橋貴明氏の発言をまとめたブログのエントリーがあったので、幾つかボケにツッコミを入れてみたい。全般的には、個別の政策がどういうメカニズムでどういう効果があるのかほとんど説明できていないのが気になるが、細部を幾つか指摘する。

日銀のインフレ率を3%にしろ

インフレ目標ですよね?

インフレターゲット政策をやって通貨を発行しても、需要がなければ民間は借りないじゃないですか。

インフレ率が上がっても意味が無いなら、最初のインフレ目標の引き上げは意味が無いと言う事になる。

国の負債は日銀が買い取っちゃったら終わりになるから。

満期が来たら、政府は日銀に返済しないといけない。終わりにならない。雪だるま式に借金を続ける事も可能だが、それはハイパー・インフレーションを招きかねない。

耐震化の補助金とか助成金とかをやる。すると企業は投資をはじめる

今の耐震化基準で問題があるのであろうか。津波の被害は甚大だったのだが、地震の構造物への被害が大きかったわけではない。

日本には1800万戸の’81年以前に建てられた住宅があるんです。これらは震度7が来たら全滅しますよ。こうしたものは立て替えてもらわないと

最初に「耐震化の補助金とか助成金で・・・企業は投資」と言っているが、住宅を保有するのは家計になる。

3.11を受けての震災対策の公共投資であるならば、沿岸部の村に40mとか50mの防潮堤を建設すると言う話になると思うのだが、なぜか住宅。また、日本の住宅の耐用年数は26年と言われ、人口減少に伴い空き家が増えている昨今の状況を考えると、建て替え促進は無理があるように思える。

しかし増税と公共投資もケインズ政策として需要拡大になるのだが、三橋氏がこちらを主張しない理由に興味が沸く。やはり増税を主張すると本が売れないためでであろうか?

12 コメント:

bonjin さんのコメント...

>インフレ率が上がっても意味が無いなら、最初のインフレ目標の引き上げは意味が無いと言う事になる。

需要がなければ通貨を発行してもインフレにならない、という主張のはずですが。

>雪だるま式に借金を続ける事も可能だが、それはハイパー・インフレーションを招きかねない。

FRBは米国債を買いまくっていますがハイパーインフレになりましたか?

>津波の被害は甚大だったのだが、地震の構造物への被害が大きかったわけではない。

首都直下型地震では地震そのものの被害が想定されています。

>人口減少に伴い空き家が増えている昨今の状況を考えると、建て替え促進は無理があるように思える。

人口が減少していても世帯数は増加しています。空き家が増えているのは人口減少が主要因ではありません。

>しかし増税と公共投資もケインズ政策として需要拡大になるのだが、三橋氏がこちらを主張しない理由に興味が沸く。

デフレ下で増税しても税収は増えないから、デフレ脱却が先で増税はその後、というのが三橋氏の主張で、増税そのものには反対していません。氏のブログで繰り返し述べられています。

uncorrelated さんのコメント...

>>bonjin さん
> 需要がなければ通貨を発行してもインフレにならない、という主張のはずですが。

では、三橋氏の主張するインフレ目標3%に引き上げる意味はどこから出てくるのですか?

> FRBは米国債を買いまくっていますがハイパーインフレになりましたか?

1970年代はインフレ率が高くなる一方で、実質経済成長は停滞しましたね。
アルゼンチンやブラジルは1000%越えのハイパーインフレーションになりました。

> 首都直下型地震では地震そのものの被害が想定されています。

現在の耐震基準に問題があると言うことでしょうか?

> 空き家が増えているのは人口減少が主要因ではありません。

世帯数も下がっていく予測ですが、人口動態が理由で過疎化が進んだということでしょうか?
その場合も、古い空き家を建て替えさせる必要は無いですよね。

> デフレ下で増税しても税収は増えないから、デフレ脱却が先で増税はその後、というのが三橋氏の主張

IS-LMモデルで増税と同時に公共投資をすると経済が拡大するので、こちらもケインズ政策になります。

risarisa さんのコメント...

三橋氏は公共事業の有効性を訴えたいが為に他の政策の有効性を低く見ている感がありますね。

仮に政府が財政支出を全く増やさずに日銀が長期国債を買いきる額を10倍にした場合、
インフレ期待の上昇に反応して民間投資が増加するはずですが
三橋氏はこれを「そうなるかも知れない」程度の不確かな需要としてあまり重視していません。
一方で公共事業は政府が直接カネを使う「確実な需要」として重視しています。


・増税は可処分所得を減らし需要を減らすので反対
・TPP、規制緩和は生産性向上により失業が増える可能性があるので反対
・現金給付のような財政政策は貯蓄に回り確実な需要を生まないので反対
・よって国土強靭化のように確実に需要を生む大規模財政政策のみが有効
・金融政策はMF効果を打ち消す形でのみ有効(日銀が早期に引き締めに転じて財政政策の効果を打ち消さないよう数値目標が必要)


まとめるとこんなところでしょうか
どうも公共事業の結論ありきの感があり、賛同できない点も多いのですが
デフレ脱却の重要性を訴えるために話を単純化するという三橋氏の言論方法なのではないでしょうか


日銀が国債を買ったらそれでオシマイというのは
政府が日銀に対して元利払いしても政府・日銀を統合政府として見たら
右のポケットから左のポケットに金を移すだけの話で大した問題じゃないという意味でしょう。

耐震化、建て替え補助金の話は国土強靭化ともとれますし
例え無駄であっても「確実な需要」を生むので三橋氏の主張の中では一貫して賛成される政策なのでしょう

脳環境 さんのコメント...

ツッコミを入れます。

>雪だるま式に借金を続ける

政府は日銀に金利を払う必要はないので、「雪だるま式」にはなりません。要するに永遠に返す必要がないのです。
知らないのですか?
知らないのでしたら、「国庫納付金」でぐぐってみてください。


>ハイパー・インフレーション

何をどれくらいやったらハイパー・インフレーションを起こせるのか教えて欲しいです。
どうやってハイパー・インフレーションにするのですか?
FRBは米国債を短期間で70兆円も買っているのに、デフレ寸前の低インフレですね。
また、日銀という巨像に対抗できるヘッジファンドもこの世に存在しません。
万が一存在するとしてらどのヘッジファンドなのかぜひお教え願いたい。


>地震の構造物への被害が大きかったわけではない。

今心配されているのは、阪神淡路大震災のような、直下型地震です。
直下型はプレート境界型とは地震波が違い、阪神では多くの建物倒壊したのですよ。
ご存じなかったですか?


>沿岸部の村に40mとか50mの防潮堤を建設すると言う話になる

勘違いしていますね。38mとかってのは「遡上高」であり、斜面を駆け上った高さです。防潮堤は垂直に近いので50mなどの防潮堤は全く不要です。


>空き家が増えている昨今の状況を考えると、建て替え促進は無理があるように思える。

人が死ぬんですけど。不作為で人を殺しても構わないのですか?
法整備と補助金出したら建て替え促進は可能だと思いますが。



>増税と公共投資もケインズ政策として需要拡大になる

増税したら、可処分所得が減るので需要が減ります。
三橋氏は、100%増税反対でしょう。

東電は地震の脅威が指摘されていたのに、防潮堤をケチって重大事故を起こしました。
マスコミの多くが、この東電と同じように、地震の脅威を軽く見てますね。

uncorrelated さんのコメント...

>>脳環境 さん
> 政府は日銀に金利を払う必要はないので、「雪だるま式」にはなりません。要するに永遠に返す必要がないのです。

金利ゼロだとしても、歳出拡大ペースが続けば雪だるま式になりますよ。

> 何をどれくらいやったらハイパー・インフレーションを起こせるのか教えて欲しいです。

ハイパー・インフレーションは通貨の信用が失われたときにおきますね。
例えば政府が永遠に負債を返済しない気になったときに、起きるかも知れません。

> 今心配されているのは、阪神淡路大震災のような、直下型地震です。

もし現在の耐震基準でそれが問題ならば、三橋貴明氏は耐震基準の引き上げをまず主張すべきですが、古い耐震基準の建築物の立替としか言っていませんよね?

> 人が死ぬんですけど。不作為で人を殺しても構わないのですか?

災害での死亡確率が周知されれば、古い住宅の価値や家賃が下がり、住宅投資がされると言う意味ですよ。

> 増税したら、可処分所得が減るので需要が減ります。

一般のケインズ政策とはかけ離れた主張になりますね。
IS-LMモデルとしては、増税と同額の歳出拡大は、需要拡大をもたらします。

脳環境 さんのコメント...

>金利ゼロだとしても、歳出拡大ペースが続けば雪だるま式になりますよ。

雪だるま式というのは加速度的に増えるという意味です。
金利ゼロなら加速度的には増えません。借金が歳出拡大をする理由になりませんから。
それに、歳出拡大と同時にGDPが増えれば、負債比率も増えませんね。


>通貨の信用が失われたときにおきますね。

それがどの程度なのかという問いなのですよ。
証拠&論拠がないのに「ハイパーインフレになる」と言っても説得力がないと思います。


>耐震基準の引き上げをまず主張すべきですが


程度の問題です。旧耐震基準の方が「より危険」でしょう。
新耐震基準の建物も絶対ではありませんが、比較的安全です。

>災害での死亡確率が周知されれば、古い住宅の価値や家賃が下がり、住宅投資がされると言う意味ですよ。

若干はそういう面もあると思いますが、さかんに危険を報道していますが、引越しや建て替えをする人は少数ですよね。
行政が補助をする必要があるでしょう。
早くしないと人が10万の単位で死にます。


>IS-LMモデルとしては、増税と同額の歳出拡大は、需要拡大をもたらします。

たしか、DEMIOSだったと思いますが、今の日本における増税と同額の歳出拡大はほとんど効果がでないそうです。
増税のマイナスの影響が比較的強いということです。

bonjin さんのコメント...

>では、三橋氏の主張するインフレ目標3%に引き上げる意味はどこから出てくるのですか?

デフレから完全に脱却するという意味がありますね。上方バイアスはご存知だと思いますが。

>アルゼンチンやブラジルは1000%越えのハイパーインフレーションになりました。

ドルペッグで実質的に外貨建て債務の国だとそうなりますが、日本は違いますね。

>現在の耐震基準に問題があると言うことでしょうか?

私の実家は築35年以上ですが、建て替えではなく耐震補強しました。耐用年数超えイコール建て替えではありませんね。古い耐震基準のまま建て替えも耐震補強もしていない家は今でも相当数ありますよ。

>古い空き家を建て替えさせる必要は無いですよね。

三橋氏が「古い空き家を建て替えさせろ」と主張していたのですか?
なお、古い空き家を放置しておくと震災時に隣家に倒れ掛かる、道路を塞ぐ等の問題もありえますから、せめて解体は必要でしょうね。

Unknown さんのコメント...

>では、三橋氏の主張するインフレ目標3%に引き上げる意味はどこから出てくるのですか?

横レスですが名目GDPを伸ばすためでは?リフレのエントリあげてるので理解してるかと思ってましたが・・・

uncorrelated さんのコメント...

>>脳環境 さん
> それに、歳出拡大と同時にGDPが増えれば、負債比率も増えませんね。

ドーマー条件を満たしているときはそうですね。
ただし70年代の米国の経験からは、そうなるかは分かりません。

> 証拠&論拠がないのに「ハイパーインフレになる」と言っても説得力がないと思います。

*なりうる*としか書いていませんが。ともかく、国債発行・日銀引受を無限に続けてもハイパーインフレーションにならないのであれば、無税国家が実現可能ですね。そんな事は無いから、国債の水準に気を使うわけです。

> 行政が補助をする必要があるでしょう。

行政が補助すると言う事は、耐震性のある住宅に住む人から、住まない人へ移転所得が発生するようなもので、公平性に欠けますね。

> たしか、DEMIOSだったと思いますが、今の日本における増税と同額の歳出拡大はほとんど効果がでないそうです。

DEMIOSは公共投資を行うと人口増加が発生するという、かなり特殊なモデルですね。
公共投資を続けると無限に成長する事になりそうですし。

>>bonjin さん
>デフレから完全に脱却するという意味がありますね。

そのデフレ脱却が、民間投資につながらないと三橋貴明氏は主張しているわけですよ。

>>斉藤和義 さん
>リフレのエントリあげてるので理解してるかと思ってましたが・・・

クルッグマンらが主張するインフレ目標政策の効果とは、三橋貴明氏が全く違う主張をしていると言う事です。

しまじろう さんのコメント...

ハイパーインフレの定義をご存知ないのではないでしょうか?

よしろう さんのコメント...

リフレーションを提唱する(と称する)人たちの間でリフレに対する考えがあまりにも違うのが問題の根っこですね。
三橋氏のような古いケインジアンぽい人とクルーグマンは考え方も違いますし、マネタリストよりの人もいますし、高橋洋一氏みたいな人もいますし、リフレ派でくくることにもともと無理があるんでしょう。
だからリフレが広まらないんでしょうけど。

Unknown さんのコメント...

シンプルな議論はないのか!今は、過去問では解けない時代と感覚的ではありますが、思います。

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