2012年7月27日金曜日

クルッグマン曰く、債務が税収よりもゆっくりと増えるようにする必要はある

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「政府債務を全て返済すると全てのマネーが消えてなくなる」と、中央銀行が政府債務以外の資産を購入する事でマネーを供給する事ができる事実を無視ししているブロガー*1が、クルッグマンの「誰も債務がわかっちゃいない」(WSJ)と言うコラムを引用しつつ「政府債務は返済不要」「国債については金利以外に心配はない」と主張しているが、クルッグマンが長期的には債務が税収よりもゆっくりと増えるようにする事が必要だと言っている事を無視している。

債務が税収よりもゆっくりと増えるようにする事を、少しテクニカルに言うとドーマー条件と言う事になる。

― all they need to do is ensure that debt grows more slowly than their tax base. (政府に必要なのは債務が税基盤よりもゆっくりとふくらむようにすること,それだけだ.)

長期的にドーマー条件を満たしていたら破綻はしないから、今日の常識が高水準と信じさせる債務よりも遥かに高い水準の政府債務でも、何とか乗り切る事ができる*2

that’s why nations with stable, responsible governments ― that is, governments that are willing to impose modestly higher taxes when the situation warrants it ― have historically been able to live with much higher levels of debt than today’s conventional wisdom would lead you to believe.(安定した責任ある政府をもつ国々は――つまり状況が正当化するときにはほどほどに増税するつもりがある政府は――歴史をとおしてずっと高水準の債務とうまくわたりあってきた)

クルッグマンは増税不要とも無限に債務を増やせるとも言っていない。

さて、日本は少子高齢化で社会保障費が膨らむ一方で、税収は落ちてきている*3。債務を税基盤よりもゆっくりとふくらませるには、何時やるべきかの議論はある*4けれども、増税と債務削減が必要なのは明確に思える。

問題のブロガーは、少子高齢化と社会保障費の増大について、どう考えているのであろうか。

*1あるブロガーが中央銀行が金の延べ棒を購入して通貨供給ができる事を理解できない件」を参照。

なお、問題のブロガーは「もし一切のマネーがない状態(物々交換状態)に、政府と不換紙幣だけを扱う中央銀行ができた」らの思考実験だと主張しているが、この弁解は以下の点で逆に奇妙さを増す事になっている。

  1. 1941年の米議会のFRB議長と議員のやり取りから、政府債務が無くなるとマネーが無くなると主張しているが、このときの米国は物々交換経済ではない。
  2. 同様に、1971年までは米ドル札は兌換紙幣であって不兌換紙幣ではないから、「政府と不換紙幣だけを扱う中央銀行」の話になっていない。
  3. 後のエントリーで現在経済を議論しているときに、「もし政府債務を全て返済すると全てのマネーが消えてなくなる」と言い続けている。現在は物々交換経済ではない。
  4. 中央銀行が不兌換紙幣で、貴金属(金など)や穀物(米など)が買えない事になっている。物々交換経済で株式や債券が無くても、中央銀行はこれらを買う事ができ、政府は不兌換紙幣で税金を徴収する事はできるであろう。

なお上述の議事録では「政府債務」ではなく「債務」が無くなると、この世に通貨が無くなると言っていて、中央銀行から見ると通貨は負債になるので当然の事を言っている。問題のブロガーが勝手に「政府債務」と読み替えて混沌としているが。

*2ただしドーマー条件は収束条件に過ぎないため、マクロ経済ショックで破綻する可能性は無視しているし、何かの基準で厚生評価を最大化するわけでもない。

*32002年度の一般会計税収は43.8兆円で、2007年度が51.0兆円。ただし、一般会計歳出は82.4兆円と81.8兆円で黒字にはほど遠い。特に社会保険料収入と社会保障給付費のギャップは、31.3兆円から36.8兆円へ拡大している。このギャップは90年代からどんどん拡大している。

*4独占インタビュー ノーベル賞経済学者 P・クルーグマン 「間違いだらけの日本経済 考え方がダメ」

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