2012年3月1日木曜日

F-35の開発遅延で現実に直面する防衛省

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老朽化したF-4EJを2011年度から新型機に置き換える第四次F-X計画だが、本命であったF-22が2010年に生産停止が決定され、2011年12月にF-35が導入を決定した。しかし日本へ2016年度から納入される予定であったが、米軍への納入が2017年後半であると報道されており、ここに来て機種選定の変更もありえると言及されている。

F-35の選定だが、色々と謎が多い。最終候補にはF/A-18E/F Super Hornet、EF2000 Euro Fighter、F-35 Lightning IIが残ったが、性能・経費・後方支援の3点でF-35が選定されたと報じられている(FX選定理由と配点)。EF2000よりもF-35の方が機体価格が安いそうだ。この機種選定、謎が多い。

1. 性能
評価項目の詳細が明らかにされていない。EF2000はF-35よりも空戦能力は高いとも言われ、超音速巡航性能も持つ。また、改修なしではF-35のウエポンベイは十分な数のミサイルを収容できない(時事ドットコム)。武器管制システムやステルス性能などへの配点などが高かったと想像されるが、防衛省が何を求めていたのかが分からない。
2. 費用
EF2000の単価は€6,300万(約70億円)と伝えられているが、防衛省のF-35の調達価格は約100億円に設定されている。5機目以降のライセンス生産分は、F-15の経験から言えばこの1.5倍程度に膨らむ。BAEは欧州各国への販売価格よりも、大幅に高い価格を提示したのであろうか?
3. 後方支援
ステルス性のためF-35の塗料などは特殊なものが使われていると想像される。ステルス戦略爆撃機B-2には専用ハンガーが用意され、F-117は保守費用が原因で早期退役が決定された。本当にF-35は保守性が最も良いと評価されたのであろうか?
4. 配備計画
開発途中のF-35の配備計画が遅れる事も、調達費用が高騰する事も予想されている。F-35では自衛隊で採用している国産ミサイルが搭載できないので、ウエポンベイや火器管制システムの改修が要るので、米軍機と同時に納品される可能性は低い。また、機種選定から二ヶ月程度しか経過していないが、既に122億円程度に高騰する事が見込まれているそうだ(東京新聞)。

防衛省はF-22の調達を目指して選定時期を引き伸ばした経緯があり、昨年12月の決定時もF-35が有利になるように恣意的に(1)~(4)の評価方法を設定した可能性は少なく無い。例えばEF2000は給油システムの改造費用を多めに見積もっていたかも知れない。

現場はなるべく強い装備を求めがちなので、F-35を欲しがるのは理解ができる。しかし米軍の調達計画の見直しにより、F-35を導入する関係国の費用評価や配備計画に問題が出てきたのは確かなようだ。既に多くの国が調達計画を見直しだしている(Reuters)。

日本は老朽化したF-4EJのリプレースなので、F-35のこれ以上の遅れは、下手をすると防衛能力に空白を空ける事になる。ロッキード社の生産予測によっては、F-35の調達を諦めざるを得ない。そのときに、F-22とF-35を追い求めた選定方法が妥当なものであったか議論が出てくるはずだ。防衛省は責任問題と言う、面白く無い現実を突きつけられる事になる。

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