2012年3月12日月曜日

生産年齢人口の減少を直視する

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

白川方明日本銀行総裁は、その量的緩和に否定的な姿勢から何かと批判されている。特にリフレーション政策を推進する人々には、その全ての言葉が虚偽に映るらしいが、実際の所は保守的で堅実な主張しかしていない。特に90年代以降の日本の低成長率は生産年齢人口の減少で、今後もその傾向は続くと言う指摘は、実に妥当で面白く無いものだ。

下のグラフは『日本の将来推計人口(平成24年1月推計)』からの引用だが、生産年齢人口の減少が発生しており、その影響が増していくことがわかる。これは生産力の低下を意味するので、明らかにGDPの下げ要因だ。また、(老年人口+年少人口)/生産年齢人口も下がるわけなので、一人当たりGDPも強力な下げ要因にさらされる。

景気の悪化が出産を先送りにすると言う報告もあるのだが、戸田(2007)は日本では雇用環境の改善が出生数にもたらす効果は大きく無いとしている。なお、児童手当や保育園の定員数拡充も影響が小さいそうだが、都道府県ごとに制度に大きな差異は無いので、こちらは出産するか否かの判断に影響を与えるほどでは無かったのであろう。現行制度では、結婚と同等の生活保障がシングル・マザーに与えられているわけではない(関連記事:特殊出生率の引き上げ方)。

白川総裁は、少子高齢化とともに金融政策に限界がある事を常々示唆しているのだが、労働人口の減少が中央銀行に如何ともし難いのは理解できる。

もっとも人口減少局面でインフレ・ターゲティングを導入してはいけない理由も特には無く、デフレのネガティブな効果(価格調整速度の低下や年金制度への負担)は明確に存在する。「中長期的な物価安定の目途」の導入がインタゲだとしても、もっと早い時期に打ち出せなかったのかは疑問が残る。また、インフレ目標はもっと野心的な水準でも良いはずなのだが、実に控えめな水準だ。この保守的で控えめな態度が現在の日本銀行に求められている事のようには思えないのだが、今の日銀総裁はそれに満足しているように思える。

2 コメント:

Chiznops さんのコメント...

池田信夫氏や藤沢数希氏などはインフレ目標に否定的なようですが、ブログ主様がこの政策を支持する理由を記事にしていただければ幸いです。

uncorrelated さんのコメント...

>>Chiznops さん
コメントありがとうございます。
私がインフレ・ターゲティングの説明より、以下のPDFを参照された方がよろしいかと思います。
http://www.nira.or.jp/pdf/review1.pdf

コメントを投稿