2011年9月19日月曜日

『GALAPAGOS』が死にかけている理由

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タブレット端末(EB-W51GJ-R、EB-W51GJ-S)の生産終了で、A01SHの生産・販売が続いているのにも関わらず『絶滅』が報じられた『GALAPAGOS』だが、シャープは来年にも新モデルを投入する事を宣言し、それを否定した(ITMedia)。

『GALAPAGOS』は電子書籍を提供するコンテンツ配信サービスでもあるのだが、タブレット端末に注目がいって、そちらの評価はあまりされていない。そこで『GALAPAGOS』について現状をまとめてみたが、やはり死にかけのように思える。

1. 『GALAPAGOS』は電子書籍を提供するコンテンツ配信サービス

『GALAPAGOS』は電子書籍を読むハードウェアと、電子書籍のフォーマット『次世代XMDF』、電子書籍の管理・表示を行えるソフトウェア、電子書籍を提供するコンテンツ配信サービスで構成されている。目新しい所は特に無いが、『次世代XMDF』で日本語表示に優位性がある事がアピールされている。

2. シャープ製タブレット端末と言うハードウェアの比重は低い

タブレット端末が注目されているのだが、PC用のソフト『GALAPAGOS Station』と、Android用の『GALAPAGOS App for Smartphone』も存在し、Androidマーケットからダウンロードできる。『次世代XMDF』フォーマットのコンテンツを作成できる『XMDFビルダー』も7月26日から無償提供、正確に言うとGPL/LGPLのオープンソースとして提供されている(ITMedia)。

3. Androidタブレット端末の普及はこれから

シャープ製タブレット端末である必要は無いものの、Androidタブレットの存在は重要だ。Android 2.xはスマートフォン向けのOSだったので、Android 3.x端末が重要となる。生産中止になったシャープ製タブレット端末はAndroid 2.xなので、一般向けに普及を狙ったモデルとは言えないものだった。Android 3.xのタブレット端末は、今夏ぐらいからバリエーションが充実してきている。

4. 世界標準フォーマットである必要は無い

『GALAPAGOS』への批判で、事実上の国内規格のフォーマットを採用していて、世界標準ではない事を問題視するものは良く見かける。しかし、これは的を外しているように感じる。

自社で提供していない商品やサービスと連携をとる必要があるときだ。写真等のデータは互換性が無いと困るのだが、専用リーダーで本を読ませるアプリケーションにおいて、そのデータ形式が世界標準である必要性はほとんどない。

ePUBと比較すると出版時にシャープにライセンス料を払わないといけないデメリットがあるわけだが、それはコンテンツ配信サービス事業者の問題であって、消費者としては良いリーダーが提供されるか否かが問題になる。QRコードやFelicaカード(SUICAやEdyやID)も、国内発生規格ではあるが、消費者がそれを気にしているわけではない。

5. 鍵になるのはソフトウェアとコンテンツ配信サービス

こうしてみると、ハードウェアとしての『GALAPAGOS』は重要ではない。Android 3.x用のアプリケーションを提供していけば、ハードウェアはシャープの努力に関係なく充実していくのは確実だからだ。

国内規格のフォーマットも、アプリケーションやサービスの充実度に影響が無ければ、何も問題が無い。要するに、ソフトウェアやサービスとしての『GALAPAGOS』が育成できるかが鍵になる。

6. ソフトウェアとコンテンツ配信サービスも充実していない

タブレット端末の生産終了自体は何ら問題では無い。しかし、ソフトウェアとコンテンツ配信サービスも充実していないので、やはり『GALAPAGOS』は死にかけている。

『GALAPAGOS App for Smartphone』のレビューを見てみよう。コンテンツ配信サービス『TSUTAYA GALAPAGOS』から電子書籍を購入し、閲覧するアプリだ。☆の数は悪くないが、対応機種が限られている点や、再ダウンロード権限が1年しかない点や、SDカードにデータを移せない点が不満に思われているようだ。インターフェイスも良く分からない。コンテンツ購入画面が「TSUTAYA GALAPAGOS」、未読・おすすめ一覧が「デスク」、購入コンテンツ一覧画面が「ブックシェルフ」と各メニューの名前が分かりづらい上に、一貫性が無い。しかも、「TSUTAYA GALAPAGOS」から「デスク」への切り替えはメニューから「デスク」を押して操作する一方で、逆は画面下部にある「TSUTAYA GALAPAGOS」を押す事になる。起動時に「ブックシェルフ」が表示されるべきだと思うが、「デスク」が表示されるし、「デスク」には広告が大きく表示されている。書斎に本屋のポスターを貼る人は一般的ではないはずだ。

取扱い書籍数も十分には思えない。「時をかける少女」を検索しても出てこない。「涼宮ハルヒの憂鬱」「刀語」「精霊の守り人」も出てこない。

在庫を抱えるリスクも回し読みや転売される可能性も無いのに、紙版とほぼ同じ価格になっているのも理解に苦しむ。野田首相の「民主の敵」は紙の書籍は714円だが、630円で販売されている。Kindleが米国で普及したのには、電子書籍の価格がペーパーバック版よりも3割以上安い事も理由にあげられる。

7. 『GALAPAGOS』は死滅の危機にある

タブレット端末(EB-W51GJ-R、EB-W51GJ-S)の生産終了は、大きな問題では無い。しかし、ソフトウェアとコンテンツ配信サービスから見ると、やはり『GALAPAGOS』は死滅しそうだ。

『GALAPAGOS』を見ていると、2007年に終了した音楽配信サイトbitmusicを思い出す。1999年12月にオープンし、iTunesストアよりも5年も早く音楽配信を始めたサービスだが、権利関係が理由なのかコンテンツ価格が高く、ユーザビリティーの低いウェブサイトやソフトウェアで人気が出なかった。今から思えば、方向性は正しいのに、細部が消費者の方に目が向いていないコンテンツ配信サービスだったと思う。

『GALAPAGOS』は取扱い点数を増やしている段階で、まだ本格的に消費者に売り込む姿勢を見せていないが、このままでは死滅するのは間違いない。ソフトウェアのユーザビリティ向上と、コンテンツの品揃えの強化を急がないと、『世界標準』のAmazonのKindleあたりに駆逐される可能性は少なくない。

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