2011年6月22日水曜日

陸上風力発電の限界

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

6月17日に日本経済新聞が風力発電の新設が伸び悩んでいると報じている。従来は建設費用の3分の1を国が補助していたが、2010年度から新規案件への適用を停止したことが響いたとある。

補助金不足で新設不能とは再生可能エネルギーは駄目だなと思った人が多いと思うが、現在の大規模ウィンドファームの発電コストは10円/kWhまで低下しており、採算性は随分と改善してきている。一方で、風況や環境問題で立地条件が限られるようになっており、補助金が得られる期間中の計画でも建設が頓挫したケースもある。

現状で最も廉価な再生可能エネルギーの風力発電であるけれども、これらの問題を解決する浮体式洋上風力発電が実用化されるまでは、日本では本格導入は無理なようだ。

1. 風力タービン設置数の増加と大型化

NEDOの公開資料「日本における風力発電設備・導入実績」を元にすると、2009年までは風力発電の総設備容量は順調に増加してきた。2000年は143,744kWであったが、2009年には2,185,938kWと約15倍に増加している。楽観的に見て利用率は20~30%程度だと思うので、原発1/4基程度の発電実績があると考えて良いであろう。

日本の風力発電所の総設備容量の推移
2000 2003 2006 2009
総設備容量(kW) 143,744 680,709 1,490,312 2,185,938
設置基数(基) 259 741 1,317 1,683
平均タービン出力(kW) 555 919 1,132 1,299

大型タービンの方が費用対効果が高いため、技術的にはタービンの大型化が進んでいる。1995年には直径50m程度だった羽根のサイズが、126m以上と倍以上になった。この結果、平均タービン出力は、2000年の555kWから、2009年は1299kWまで向上した。2000年には2MW超の風力タービンの新設は無かったが、2009年は37基になっている。1MW~2MWの風力タービンも20基の設置から、106基の設置に増えている。逆に1MW未満の小型タービンは2001年に127基、2005年に102基の設置があったものの、2008年は6基と激減している。

大型タービンが可能になったのは、素材の改良により軽量化が可能になったためだ。技術的に低コスト化は進んでいる。ただし、鋼材価格などの上昇もあり、2004年以降はシステム価格は上昇している。

2. 大規模ウィンドファームによる発電コストの低減

タービン大型化が功を奏しているのか近年の発電コストは10~24円/kWhとされており、再生可能エネルギーの中では価格競争力が高い方になる。

発電コストを決定する要因は、概ね風力発電所の総出力規模(風力タービンの出力合計値)による。30MW以上は10円/kWh(利用率22%)、6MWや4.5MWでは14円/kWh(利用率22%)、3MW~600kW(利用率20%)では18~24円/kWhになっており、総出力規模が大きいほどシステム価格、運用・保守費は割安となる(NEDO 再生可能エネルギー技術白書)。経費の大半は機器の価格であり、風力タービン価格の下落でより低コスト化が可能になる。

大規模ウィンドファームの発電コストは、採算見込みが立たないと言われる一方で、競争的なレベルに達しつつある。

3. 陸上風力発電所が盛り上がらない理由

立地条件が限られて来ているため、風力発電所は流行らない。風向が良く無いと利用率が低くなり、周囲に人家がない所で無いと騒音公害が発生するためだ。また、バードストライクの問題もあるため、渡り鳥の通過地点などは避けて建設する必要がある。年内にも環境影響評価が義務付けられる方針で、規制は強まる方向だ(東京新聞)。

長崎県五島列島の宇久島では、2kW級風車を50基設置するという事業は2009年に公表されたが、健康被害を恐れる島民の強い反対に遭い、事実上「凍結」されている(西日本新聞)。渥美半島の風力タービンは3Km先まで騒音が響くに行くとメディアにも紹介されている。上の動画にある通り、騒音は確実にあるので、否応無しにも周辺住民は被害を受ける事になる。

4. 陸上風力発電の終焉、浮体式洋上風力発電の始まり

廉価になって来たのに環境問題で陸上を諦めなければいけないのは残念な限りだ。全国に2,000基弱も建設してみたものの、風況や騒音問題を解決できる浮体式洋上風力発電が本格化しないと風力発電は始まらない事が確認されただけだった。かなり大量の補助金が浪費された事になり、本来ならば杜撰な計画を国会で追及すべき状態だ。

浮体式洋上風力発電は期待が持てる。陸上の風力タービンほど廉価になるとは限らないが、洋上だと風況が良く利用率が高まるので単位あたりの発電コストは同等かそれ以下にする事が可能だと言われている。少なくとも、周辺住民がいない地域に立地することが可能だ。ブレード部分は陸上のものの転用になるし、浮体部分は海上油田などで培った技術も転用できる。

本ブログでも三陸沖で浮体式洋上風力発電の実証実験を妄想しているが、長崎県五島市椛島沿岸1Kmの地点で環境省が京都大学に委託して2MW級風車で実証実験を計画している(環境省)。思ったより早く、日本の電力の何割かを担う存在になるかも知れない。

0 コメント:

コメントを投稿