2011年6月11日土曜日

雨ふってセシウム流れる?

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福島第一原発の災害・事故で、現状で最も大きい不確実要素の一つに、土壌汚染がある。チェルノブイリの居住禁止区域と同レベルの土壌汚染が約600平方Kmに達していると言われ、土壌汚染が存在するのは確かだが、土壌汚染が健康に与える被害や、土壌汚染がこのまま続くか、有効な除染方法があるのかなど不明確な点は多い。

現時点では、人が住めなくなる土地と言い切るのは、住民感情を考えてもナンセンスだし、かといって原発災害の損害から土壌汚染を完全に忘却するのは、賠償金額の計算をする上でも間が抜けている。文部科学省は、これらの状況を良く理解しているので、土壌汚染のモニタリングを続けている。

1. 4月、5月は放射性セシウムは減らず

文部科学省の公表データをグラフ化してチェックすれば分かるが、5月末までは状況は余り芳しくなかった。半減期を反映して放射性ヨウ素は劇的に減少しているのだが、放射性セシウムの量は増減を繰り返していたからだ。それどころか福島市杉妻町の5月のデータに限ると、逆に放射性セシウムが増加している

2. 3月から5月中旬は月間降水量が多くない

福島県は3月から5月中旬は月間降水量が多くない。気象統計情報で飯館村の降水量を見ると、3月は33.0mm(3.11以降は27.0mm)、4月は59.7mm、5月は28日までが27.0mmとなっている。大半のセシウム化合物は水溶性なのだが、雨量が少ないので土壌に定着して見える可能性がある。

3. 飯館村では、大雨でセシウム流れた?

熱帯低気圧が来たので、5月29日以降に118mmの降雨が観測されている。これは原発災害発生以降、最大の雨量で、土壌中のセシウムが減少している可能性を期待できる。以下は文部科学省の公表データを元にした飯館村長泥【33】の土壌中の放射性物質の量のグラフだが、実際に5月27日以降の観測値は大幅に減少している。

測定誤差が気になる所だが、直近の6月7日の観測データは4回とられているので、誤差は少ないと考えられる。ただし、同日の空中放射線量は16.2μSv/hで、5月中よりは高い数字となっており、土壌中放射能の測定結果と傾向が一致しない。

4. 他の場所でも降雨で変化

川俣町山木屋、浪江町津島では同様に土壌中放射能濃度が低下傾向にある。逆に浪江町赤宇木は、上昇傾向にあるようだ。5月中は上昇傾向にあった福島市杉妻町は、6月1日の測定データでは、僅かな減少傾向を示していた。

統計的な有意性を検討するだけのデータ量は無いが、傾向としては飯館村長泥以外の場所でも110mmの降雨で変化をしているように思える。

5. 福島第一原発の災害被害を語る前に

雨が降って放射性セシウムが流れた消えるというのは、希望的観測ではあるものの、多少は裏づけとなるデータが出てきたように感じる。

降雨による流出・流入が発生しているというのは、政策的には二つの重要な情報になる。まず、住民が近い将来に帰宅できる可能性があると言うことだ。東京電力の損害賠償額も自ずから小さくなると考えられる。次に、現段階では表層と下層の土壌入れ替えなどの措置を取ってはいけないと言う事だ。長期的に状況が悪化する可能性がある。

流出ペースは遅いので、梅雨や台風によって土壌中の放射性セシウムが流出するのを待って、降雪が始まる前に必要な場所で土壌入れ替えが、適切な政策になりそうだ。楽観的な見方だとは思うが、計測データは悲観するような傾向ではない。

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