2010年12月3日金曜日

PlayStation 3で構成されたスパコンが拡張される

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

米空軍研究所(AFRL)の1,760台のPlayStation 3を接続したスーパーコンピューターが12月2日の式典で公開された。防衛分野における最速インタラクティブ・コンピューターと呼ばれている(Gamasutra)。

1. 最高では無いが、中程度の性能を持つスパコン

このスパコンは、2009年に336台の構成から開発が始まっており、身近なゲーム機を連結していることから世間の注目を浴びてきた。日本のFixstars社が、同システムを構築している。

AFRLハイ・パワー・コンピューティング・ディレクターのMark Barnell氏によると、このコンドル・クラスタ(The Condor Cluster)は、168の独立した画像演算処理装置と84の管理サーバーも含まれ、500 TFLOPSの演算能力を持つ。現在トップの天河1Aが2,566TFLOPSの性能なので最高とは言えないが、ランキングで30位程度の性能になるようだ。

ニューヨークに設置されているが、米国全土の全空軍の支部とセンターが利用でき、衛星写真の処理や、人工知能の研究、レーダー技術の性能向上や、パターン認識に利用される。広い範囲での利用が期待されているが、写真は秋葉原の古びたビルの2階や3階にある中古ショップのような雰囲気だ。

2. ゲーム機でスパコンの構築が一般化している

ありふれたゲーム機でスパコンを作るアイディアはAFRLが初ではなく、米イリノイ大学の国立スーパーコンピューター応用研究所(NCSA)が、2003年にPlayStation 2を70台連結したシステムを構築している。このPS2クラスタでは、ハードウェアだけではなく、ソフトウェアもLinuxやMPなどの汎用的なものが応用されている。またPS3クラスタも、小規模なものならノースカロライナ州立大学やマサチューセッツ大学ダートマス校で稼動している。コスト・パフォーマンスが高いためだ。

3. 空軍のPS3クラスタも費用対効果が高い

空軍のPS3クラスタは、同等性能の他のスパコンよりも費用は5~10%、消費電力は10%にしか過ぎないとされる(POPSCI)。システム全体のコストは200万ドル(約1.7億円)だそうだ。しかし、最新モデルのPS3はLinuxを「その他のOS」としてインストールできないため、今回使われた1,760台は大型の旧モデルになる。Sonyが新モデルにLinuxをインストールできるようにしていれば、もっと低コスト・低消費電力な計算機クラスタになった可能性もある。

4. ソニーの方針転換でゲーム機スパコンは危機にある

2010年4月に、PS3からその他のOSのインストール機能が削除され、プロジェクトの成否が危ぶまれて来たが、無事に拡張をしたようだ。なお同機能の削除に関しては、「利用できると宣伝していた貴重な機能を、意図的に無効にした」として、ソニーに対して集団訴訟が行われており(SourceForge.JP)、米空軍も故障時の代替部品の調達には苦労するかも知れないとしている(WIRED VISION)。補給物資として、中古品のPS3をオークションで落札されることもあるのかも知れない。

2 コメント:

Unknown さんのコメント...

200万ドルって1.7億円ですよね。
約200人月。安いですね。

uncorrelated さんのコメント...

>>Nakamaさん
コメントありがとうございます。円換算額は直しました。

コメントを投稿