2010年12月2日木曜日

世界最大の家畜排泄物からのメタンガス発電システムが中国に設置される

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中国のある巨大酪農場は今や世界最大のメタン・ファームであり、膨大な温暖化ガスを魅力ある再生可能エネルギーに変えている。沈阳乳业有限责任公司(Huishan Dairy)は、GE製イエンバッハ・ガスエンジンを導入し、25万頭中6万頭の牛の糞から生成したメタンガスを電力に変えている。その電力量は5.66 MWhで、典型的な米国家庭であれば3,500世帯分に該当する。ただし、日々の操業は送電会社のBlue Sphere社が担当しており、農家が行っているわけではない(POPSCI)。

酪農場は牧草地と違い牛の排泄物の回収が容易であるためか、家畜の排泄物からメタンガスと肥料を生産するプラントは近年、よく設置されている(TreeHugger)。ただし、報道されている既存のプラントは、牛が1000頭未満の規模であるので、中国のケースが大規模なのは間違いない。

排泄物処理プラントは、電力以外のメリットも多い。概ねプラントは、次のような仕組みになっている。まず、家畜のどろどろの排泄物をメタン発酵槽に入れる。メタン発酵槽は、空気が入らないように密閉されており、また、適切な発酵温度を維持して、攪拌されている。発酵日数が経過すると、発酵槽の上層にメタン生成菌が生成したメタンガスがたまり、中層に廃液、下層に残渣が残る。メタンガスは酸化鉄で水素化脱硫をし発電に、廃液は液肥として、残渣は脱水して堆肥として使われる。

発酵温度・発酵日数・攪拌方式、排泄物の投入頻度などにノウハウがあるそうだ。またガスでエンジンを回すだけではなく、燃料電池で発電する方式もあるようだし、発電廃熱を発酵温度の維持に使うなどの工夫もされている。

米ペンシルベニア州ピッツバーグ郊外のケースでは、年間20万ドルのコスト削減に結びついたほか、牛糞の臭いに対する苦情も減り、発電後の廃棄物を腐葉土として販売もできたそうだ(CNN)。中国Huishan Dairy社は年間に38万MWhの発電と、62万トンの肥料に加えて、18万の認証排出削減量(CER)の獲得も計算に入れている(BusinessWeek)。

犬の糞で発生させたメタンガスで公園の照明に使う公園もニュースになったが、かつてのラクダの糞のように、家畜の糞尿を再びエネルギー資源として捉える時代になっているようだ。なお、米国のケースでは州環境保護局が60万ドルの補助金を拠出しているが、Huishan Dairy社が同様の制度を利用しているかは確認できなかった。

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