2010年10月6日水曜日

唾液や涙、粘膜に含まれる酵素で、多剤耐性菌を撃退

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日本各地の病院で多剤耐性菌の感染者が出ていたと報道になっている。日本に限らず、世界的に抗生物質耐性菌は広まりを見せており、薬剤で対応ができないために医療関係者の悩みがつきない。新種の抗生物質の開発が急がれているが、ちょっと変わった抗菌剤を開発している研究者もいる。

涙、唾液、粘液に含まれる融解酵素は、細菌の細胞壁に穴をあけ、内圧で細菌を破裂させて死をもたらす。ペニシリンの発見の5年前の1923年には、ペニシリンを発見したフレミングは粘液中のこの殺菌物質について気づいていたが、抗生物質の成功によって注目されては来なかった。しかし、抗生物質の乱用による抗生物質耐性菌の蔓延によって、再びスポットライトを浴びているそうだ(R&D Mag)。

ジョージア工科大学の定量生物学者のJoshua Weitz氏とGabriel Mitchell氏と、メリーランド大学の生化学者Daniel Nelson氏がチームを組んで、この融解酵素を特定する先駆的な方法を開発し、Physical Biology誌に投稿した。融解酵素の殺菌特性を識別するために、顕微鏡スケールで酵素が細胞に穴をあけて細菌に死をもたらす比率を確認したとのこと。彼らによると、融解酵素とその殺菌作用は何十年も研究されてきたが、治療学的な詳細の研究はここ最近だそうだ。酵素の効き方を調べることで、細胞レベルでのプロセスを推測することができ、融解酵素の影響を受けやすさが違うであろう遺伝学的な細菌の範囲を予測できるようになったそうだ。この研究がより多くの酵素を特定する足がかりになるかも知れない。

抗生物質の代わりに、溶解酵素が使えるようになるかは不明だが、抗生物質耐性菌に対しても有効な薬剤が探求されているのは確かだ。現状では、病院内での感染予防や抗生物質の使用抑制で対応しようとしているが、もっと気楽に薬剤を投与していても問題無くなるのかも知れない。

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