2010年10月15日金曜日

理研の研究で自分には英語耳が無いと凹んだ人へ送る、5つのノウハウ

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日本人は生後14カ月までに日本語耳になっており、英語で子音の連続を聞く能力を失っている。英語のリスニングが苦手な人に諦めを提供しそうな理化学研究所とフランス国立科学研究センター(CNRS)の共同研究が話題になっている(マイコミジャーナル)。

なるほどと思った人も多いかも知れないが、この研究では『英語耳』を永続的に失っているとは主張していない。むしろ日本語育ちで英語運用能力が高い人も多く、既存の学習法でこの日本人の欠点は補うことができると考えた方が良いだろう。

では実際に、何をすればハンデキャップを乗り越えて英語運用能力をもてるのか。TOEIC500点未満・英検3級以下の英語力の人が理研CNRS研究に打ち負けないように、インターネットでの検索を駆使して、5つの英語学習ノウハウをまとめてみた。

1. 発声方法を覚える

多くの日本人は、英語のつづりの発声方法を知らない。例えば、簡単な単語でできた早口言葉の"She sells sea shells by the seashore"を正しく発音できる人は比較的少数であろう。音節sheとseで口の開き方が違うのだ。リエゾンも知らないか、忘れている人は多い。これは、例えば"I need to find a pencil"とあると、needとto、findとaの音が連結する英語の音のつながりのルールだ。これら英語の発声方法を知らなければ、当然、英語を聞いてもリスニングできるはずがない。

この問題は、中学校の発声方法の教授法に起因すると思う。発音記号の説明で、『口は形を閉じかげんにします。上下の唇はつけずに少し開いています。歯と唇はくっつくすれすれで開いておきます。舌の位置は上。「い」「う」の中間位置です。「い」は舌が前方、「う」は舌が後方に来ます。・・・』のような説明を受けた人はいるかも知れない。難解すぎて、説明として意味が無いように思える。そもそも単語ごとに発音記号を覚えるのは、膨大すぎて無理がある。

しかし、発音記号ではなく音節ルールで発声を学習できる、有効かつ廉価なノウハウは幾つもあり、これを使わない手は無い。

1.1. Phonics(フォニックス)
北米で幼児が教わる音節単位の発音方法。音節単位での典型的な発音を覚える。幼稚園生ぐらいを対象にしているので、上述のような説明は無い。北米で放映されていたという『ライオンとイングリッシュ(Between the lions)』を見ていると、パントマイムができそうなおじさん(お兄さん?)が口をパクパクさせて説明させている。口の形と舌の位置で大雑把な音の出し方が説明されるので、ノン・ネイティブが最初に目標にする下手でも通じる英語には十分だ。
1.2. 西蔭浩子氏(おばさま)
大正大学教授。日本人向けの英語リスニング法の専門家。『3か月トピック英会話 TOKYOまちかどリスニング』『英語が伝わる!100のツボ』のNHK語学番組での出演で知られ、ポジティブな言い回しと、高い演技力に定評がある。著書『英語リスニングのお医者さん [改訂新版]』は、英語の音のつながりのルールを説明しており、リスニング教科書として使える。
1.3. 遠山顕氏(けんさん)
英語教授法の専門家。担当している『ラジオ英会話』などのNHK語学番組内で、音節単位で音の説明をしてくれる。また、「英語の音のつながりのルール」も説明してくれる。説明が平易なので、理解できる可能性が高い。NHK語学番組は、今はストリーミング放送もあり、テキストも廉価なので開始しやすい学習法だ。

2. 語彙を増やす

知らない単語や言い回しは聞き落とす可能性が高い。リスニング能力が低いのであれば、なおさらだ。もちろん知らない語彙が多いと、文意が正しく理解できる可能性は低下する。

英語を聞き取る可能性をあげるには、なるべく語彙をあげる必要があるだろう。一般的な英米人は2万~3万5000語の語彙があるという。面白いことに大学卒業レベルで20,000語、それから毎年3,000語ぐらい増えていくらしい。言葉は生きているので限界は無いのだが、2万語は一つの目安になるはずだ。

そんな事は分かっていると抗議されそうなので、ちょっとしたノウハウを付記しておく。

2.1. Academic Word List
AWL Exercises Homepageで配布している。その名の通り教育分野で用いられる単語をまとめたものだが、英米人には基本的な単語群なので学習効果はきっと高い。
2.2. 無料コンピューター学習教材
英語学習SNSSmart.fmや、忘却曲線理論が元になっておりゲーム感覚で効率的に単語が覚えられるソフトP-Study Systemなどの評価が高い。
2.3. 瞬間英作文
英語上達完全マップで紹介されている短文暗唱方法。TOEFLのライティングのテキストなどでも、同様の手法は推奨されており、実験によっても効果が確認されているそうだ。
2.4. 英語多読
夏目漱石が行ったという英語学習方法。難易度の低い本から、高い本に読むものを変えつつ、大量に読んでいく。ただし忘却曲線は考慮されていないので効率が悪いとされるので、単語帳などは整備した方が良い。読むものによっては偏向がかかりheteroscedasticityみたいな単語ばかり覚える。小説などに限定した方が良いであろう。

3. 語感を鍛える

"Smoking dish"を想像して欲しい、湯気が立った料理の皿を想像できるであろうか?

これも語彙の範囲だが、英語風の言い回しや微妙なニュアンス、つまり語感を覚えていく必要がある。話し手と同じ語感が無いと、誤解が生じるのは確実だ。そして日常会話の方が、微妙な語感に頼った表現が用いられる。

解説本は色々と出ているが、明治大学政治経済学部マーク=ピーターセン教授が、「日本人の英語」「続・日本人の英語」「心にとどく英語」など、英語におけるニュアンスを解説している著作を残しており、推薦図書にあげられることが多い。

4. 音声教材を利用する

明治維新直後の津田梅子は6歳で留学して英語を覚えたし、終戦後に進駐軍のアルバイトで英語力を鍛えた日本人は多くいて、高度成長期では映画や洋楽で英語を覚えたと言う英語教員も多いようだが、これらは音声教材などが無い時代の逸話だ。現在ではリスニングだけなら、英語ニュースのストリーミング放送や、映画やドラマのDVD等もあるため、これらを音声教材として利用するのは一つの手段だ。

ただ、米国のドラマ、例えばフレンズあたりを聞いていると、恐らく聞き取れなくてひたすら凹む。最終目標としてはあるのだろうが、英語学習開始段階では学習進捗を測るために利用するぐらいに思っておく方が、精神衛生上は良いであろう。

5. 楽を諦めて学習に励む

近年の英語教授法の研究成果の紹介を見る限りは、時間をかけて量を詰め込むことが、最も効率的な英語学習法だと理解されている。英語専門家によると、日常英会話で300~400時間、ビジネス英語で2,000~3,000時間の集中したトレーニングが必要だ。大学受験前までの学習時間は1,000時間であり、それから2,000時間かけると、用件があれば何とかコミュニケーションが取れるようになると考えられる。

つまり、集中して3,000時間を頑張り抜かないと英会話能力は身につかないので、楽をするのは諦めるしかない。世の中には楽な学習法(e.g.グロービッシュ)や試験対策本が溢れているが、前者は意味がないし、後者は実用的ではないのだ。数多の英語学習ノウハウのウェブページが存在するが、具体性があり信憑性が高いページほど膨大な学習量を示唆している。

まとめ

理研CNRS研究では、いつ「英語耳」が無くなるのかを分析したが、そもそも英語学習開始時にそれが無いのは変わらないので問題ない。実際のところは、「英語耳」の無さを補完する方法として、質量作戦とリスニング・ノウハウがあるのが分かっているので、英語を学習したい人は迷わず努力をするべきだ。

え、理研CNRS研究以上に凹んだって?

そういう人は、私と同じく英語学習を放棄するのも人生の一つの選択だ。

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