2010年8月27日金曜日

米国住宅価格の推移で分かる、近年のアメリカのバブル具合

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Mother Jonesに興味深いグラフが載っていたので紹介したい。1890年を100とした、物価上昇率を調整した上での、米国の住宅価格の推移を表したものだ。第2次世界大戦後は安定的に推移していたのに、1998年から明らかに急激に上昇しているので、色々と議論を呼んでいる。

二人のエコノミスト、Robert J. ShillerとKarl E. Case氏が示したデータをプロットした以下の図は、第2次世界大戦後に住宅価格は戻ると、その後は増減を繰り返しながら安定的に推移している。しかし、1998年に110を超えると、その後は実に急激に上昇している。

この理由は色々と示されているのだが、説得力が無いものも、あるものもある。住宅購入者は、毎年の値上がりが永久に続くと考えていたり、インフレ率を正しく計算できなかったという指摘は、1997年以前の安定的な住宅価格を説明できないので問題がある。住宅の転売で儲けたと言うニュースは広がるが、損をしたというニュースは広まらないので、住宅の購入意欲が高まったと言う指摘は説得力がある。しかし、価格が強い上昇基調なので、この期間に損をしたニュースはそもそも少なかったと思われる。住宅価格が上昇過程に入る契機が何であるかは、依然として疑問の余地が残る。

住宅バブルの説明は、難しい問題ではあるが、理由を二つ述べてみたい。

一つは、金融制度の自由化によって、無理な住宅ローンの構成が可能になったことだ。銀行は証券化によって自己資本比率を減らさずに融資を拡大する事が可能になったので、以前よりも返済リスクが高い住宅購入者に融資が容易になった。典型的な例はサブプライム・ローンになるが、それ以外の住宅ローンの査定も緩くなった可能性はある。

もう一つは、住宅資産価値上昇分を担保に現金を借りれるので、90年代以降は購入者の現金制約が緩くなったことがあげられる。大きな住宅ローンを借りると、例え資産価値があがっていても住宅は売却できないので、購入者は小遣いにも苦しむようになる。だから住宅価格が上昇中だと、給与所得しかない購入者の需要は減る。しかし、資産価値の上昇分を担保に現金を借りることができれば、この問題は発生しない。つまり、キャピタル・ゲインを所得に計算できる購入者であれば、需要も増加できるのだ。

どちらにしろ90年代の金融自由化が遠因になったというのが私見ではあるが、米国の人口は増加中であるし、米国人の趣向が変わった可能性もある。実需面での変化が無いとは言えないし、もっと色々な側面から理由を説明できるであろう。

ところで日本にも昔は不動産バブルがあったためか、なかなか興味深く感じる人は多いのではないであろうか。少し米国に親近感を抱いた人もいるのではないかと思う。しかし米国議会の公聴会の報道等を見ている限り、米国は日本と同じバブル後の長期不況に陥らないか心配なように思える。きっと米国人は、日本と一緒だとは思われたくは無いであろうし、そうでは無いと信じたいと思っているはずだ。

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