2010年8月25日水曜日

あと25年以内にヘリウムが枯渇する?子供に風船を買って上げられない時代に

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宙に浮く風船は誰でも見たことはあると思うが、あの中には不活性で燃えたりしないヘリウムガスが詰まっている。ヘリウム風船1個のコストは、60円もしない(検索して調べた限りボンベと風船の700個セットで3万8千円程度)。ヘリウムが稀少資源だと考えた事も無い人が多いであろう。しかし、このヘリウムが、あと25年以内に地球上から枯渇する可能性があると警告されている(Mail Online)。

現在は、米国以外の生産も増加しているが、長い間、ヘリウムの生産量の9割は米国であり、貯蔵量の8割も米国である。世界最大のヘリウムの貯蔵所は、米国のテキサス州アマリロにあり、アマリロは「ヘリウムの首都」と呼ばれている。この周辺は、天然ガスの副産物として取れるヘリウムの埋蔵量が豊富で、もともとは飛行船のために、1925年から政府機関(the US National Helium Reserve)が戦略的にヘリウムを貯蔵してきた。1965年には、冷戦による宇宙開発競争により、同機関はヘリウムの管理を強め、周辺の民間の貯蔵ヘリウムも回収して管理するようになった。しかし、1996年に2015年までにヘリウムの流通を民営化する法律が制定され、現在、政府機関はとても安価にヘリウムの売却を行っている(Wikipedia)。このため、再生不可能なガスであるヘリウムは、リサイクルもされずに使用されており、このままでは枯渇の可能性があるそうだ。

化学的に最も安定している物質で、沸点が最も低いヘリウムの利用範囲は広く、幾つかの用途では代替物が無い。例えば、半導体製造や、溶接用シールドガス、光ファイバー製造、酸素ボンベ等に利用されており、NASAでもロケットの洗浄剤や、原子炉と宇宙望遠鏡の冷却材に利用している。ノーベル物理学賞を受賞したコーネル大学のRobert Richardson教授は、低温学や、MRIに利用されている超伝導磁石の冷却材としては、ヘリウム以外の代替物が無い事を指摘している。

天然ガスの副産物として以外でも、トリウムの原子崩壊からヘリウムを増産する方法などもあるようだが、トリウムは強い放射線物質で、1988年から米国では生産されていないそうだ。現実的なヘリウムの有効活用はリサイクルしか無いが、Richardson教授は、世界最大のヘリウム供給者である米国の価格政策が現在のままでは、ヘリウムが浪費され枯渇されうる事を指摘している。

実際に枯渇するかは別として、 稀少資源であるヘリウムを風船や、声色を変えるために利用するのは勿体無い時代になっているようだ。Richardson教授は、ヘリウム風船の価格が100ドル(約8,300円)になるかも知れないと言っている。そうなったら、子供がヘリウム風船を欲しがっても、気軽に買って上げられる価格ではない。代わりに希少資源の管理がいかに大事かを教えて、うまく誤魔化す必要があるようだ。

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